April 30, 2015 Vol. 372 No. 18
1 型糖尿病における強化療法と眼科手術
Intensive Diabetes Therapy and Ocular Surgery in Type 1 Diabetes
The DCCT/EDIC Research Group
「糖尿病のコントロールと合併症に関する試験(Diabetes Control and Complications Trial:DCCT)」では,1 型糖尿病患者に 6.5 年間強化血糖コントロールを行った結果,網膜症に対する有益な効果が認められた.
DCCT では,1983~89 年に 1 型糖尿病患者 1,441 例を,糖尿病の強化療法を行う群と,高血糖症状の予防を目的とする従来療法を行う群のいずれかに無作為に割り付けた.1993 年まで治療と追跡を行った.その後,これらの対象患者のうち 1,375 例を,観察研究である「糖尿病への介入と合併症に関する疫学(Epidemiology of Diabetes Interventions and Complications:EDIC)研究」において追跡した.自己報告による眼科手術歴を年 1 回入手した.これら 2 件の研究において,眼科手術の頻度および費用に対する影響を,強化療法と従来療法とで比較評価した.
中央値 23 年の追跡期間において,眼科手術は,強化療法群 711 例中 63 例(8.9%)で 130 件施行され,従来療法群 730 例中 98 例(13.4%)で 189 件施行された(P<0.001).DCCT のベースライン因子について補正した場合,強化療法では糖尿病に関連する眼科手術を 1 回以上受けるリスクが 48%低下し(95%信頼区間 [CI] 29~63,P<0.001),眼科手術全体のリスクが 37%低下した(95% CI 12~55,P=0.01).強化療法群の 42 例と従来療法群の 61 例が白内障手術を受けた(補正後の強化療法群におけるリスク低下 48%,95% CI 23~65,P=0.002).強化療法群の 29 例と従来療法群の 50 例が,硝子体手術または網膜剝離手術,もしくはその両方を受けた(補正後のリスク低下 45%,95% CI 12~66,P=0.01).手術の費用は強化療法群のほうが 32%低かった.観察期間全体の糖化ヘモグロビンの平均値で補正すると,強化療法の有益な効果は完全に減弱した.
1 型糖尿病患者に対する強化療法は,眼科手術の長期リスクの大幅な低下に関連した.(米国国立糖尿病・消化器病・腎臓病研究所ほかから研究助成を受けた.DCCT/EDIC 試験:ClinicalTrials.gov 登録番号 NCT00360815 および NCT00360893)