レーバー先天性黒内障に対する遺伝子治療の長期的な効果
Long-Term Effect of Gene Therapy on Leber’s Congenital Amaurosis
J.W.B. Bainbridge and Others
レーバー先天性黒内障は,RPE65 の変異によって生じる,重度の視力障害をきたす小児の進行性網膜変性疾患である.遺伝子治療により夜間視力がわずかに改善する可能性が示されているが,ヒトにおける有効性の知見は限られている.
RPE65 の相補的 DNA を含有する組換えアデノ随伴ウイルス 2/2(rAAV2/2)ベクターを用いた遺伝子治療の安全性と有効性を評価するために,12 例の患者を対象に第 1/2 相非盲検試験を行い,視機能を 3 年間測定した.低用量のベクターを 4 例に,高用量のベクターを 8 例に投与した.イヌを対象に並行試験を行い,ベクターの投与量,視機能,網膜電図(ERG)所見における関連を検討した.
6 例で,程度は異なったが網膜感度の改善が最長 3 年間認められた.ピークは治療後 6~12 ヵ月で,その後低下した.ERG では,関連する網膜機能の改善は検出されなかった.3 例で眼内炎症が認められ,2 例は臨床的に重要な視力低下をきたした.中心窩網膜厚の減少の程度は,患者によって異なっていた.イヌに対して同じベクターを用いて行った RPE65 遺伝子治療では,低用量投与で視覚誘導行動は改善されたが,ERG で網膜機能の改善が検出されたのは,高用量投与のみであった.
rAAV2/2 RPE65 ベクターを用いた遺伝子治療により,網膜感度は,わずかであり一過性ではあるが,改善された.イヌモデルにおける結果との比較により,視覚路を動かすために必要な RPE65 量には種差があること,そして罹患者で予測した RPE65 の必要量は,持続的かつ確実な効果を得るための量を満たしていなかったことが示唆される.(英国国立健康研究所ほかから研究助成を受けた.ClinicalTrials.gov 登録番号 NCT00643747)