ペルー北部における有鉤条虫感染の根絶
Elimination of Taenia solium Transmission in Northern Peru
H.H. Garcia and Others
条虫症と囊虫症は,痙攣とてんかんの主な原因である.その原因寄生虫である有鉤条虫(Taenia solium)による感染は,ヒト–ブタ間で伝播することで起こる.T. solium 感染は根絶可能と考えられているが,地域的根絶の試みに関するデータは不足している.われわれはペルーの都市トゥンベスで,地域的な根絶が実現可能かどうかを検討するため,3 期で構成される制御プログラムを実施した.
ペルーの高度流行地域で,T. solium 感染の伝播阻止が実現可能かどうかを示すため,根絶戦略を体系的に比較検討した.第 1 期では,42 村落で,ヒトおよびブタのスクリーニング,抗寄生虫薬治療,予防教育,ブタの取り替えなどを行う 6 種類の介入戦略の有効性と実施可能性を評価した.第 2 期では,17 村落で,集団治療と集団スクリーニング(それぞれブタへのワクチン接種を行う群と行わない群を設定)を比較した.第 3 期では,最終戦略として,ヒトへの集団治療とともに,ブタへの集団治療とワクチン接種を,トゥンベスのすべての農村集落(107 村落,ヒト 81,170 人とブタ 55,638 頭)で実施した.介入の効果は第 2 期・第 3 期のあとに,新たな感染を引き起こしうる生存非変性囊胞を有するブタを検出するため,詳細な剖検により評価した.剖検のサンプリングの際には,血清反応陰性のブタの標本よりも,血清反応陽性のブタの標本が優先的に多く含まれるよう,重み付けした.
第 1 期で実施した戦略のうち,T. solium 感染の伝播を部分的に制御したものは 2 つのみで,以降の戦略を強化する必要性が示された.第 2 期の戦略の実施直後,658 頭のブタ標本からは T. solium 感染のさらなる伝播をもたらしうる囊胞は検出されなかった.その後 1 年間は介入を行わず,2 回目の剖検を行ったところ,310 頭中 7 頭のブタ標本に生存非変性囊胞がみられたが,抗寄生虫薬による集団治療とワクチン接種を併用した村落すべてを含む 17 村落中 11 村落では,感染したブタは認められなかった.第 3 期の最終戦略の実施後,342 頭中 3 頭のブタ標本に生存非変性囊胞がみられたが,107 村落中 105 村落では,感染したブタは認められなかった.
ペルーの高度流行地域で,T. solium 感染の伝播は地域規模で阻止されたことが示された.(ビル&メリンダ・ゲイツ財団ほかから研究助成を受けた.)