皮質骨の脆弱性 ― パイル病における sFRP4 欠損から得られた洞察
Cortical-Bone Fragility — Insights from sFRP4 Deficiency in Pyle’s Disease
P.O. Simsek Kiper and Others
皮質骨の脆弱性は,非椎体骨折に関連する,骨粗鬆症によくみられる特徴である.皮質骨の恒常性の調節はこれまで解明困難であった.骨格の遺伝性疾患の研究により,まれな疾患とよくみられる骨格の疾患の治療に,実験的なアプローチを積極的に試していくための洞察が得られる可能性がある.
皮質骨の菲薄化,四肢変形,骨折を特徴とする遺伝性疾患であるパイル病の 4 例を評価するために,2 例にエクソーム解析を,2 例にサンガー法による配列決定を行った.1 つの候補遺伝子が同定されたあと,その表現型をもつノックアウトマウスモデルを作製し,骨構造の変化の原因となる機構を検討した.
全例に,可溶性 Wnt 阻害因子である分泌型 frizzled 関連蛋白質 4 をコードする遺伝子 SFRP4 に,両アレル性短縮型変異が検出された.Sfrp4 欠損マウスでは,パイル病患者と同様,海綿骨と皮質骨の両成分で Wnt と骨形成蛋白質(BMP)のシグナル伝達が異なって調節された結果として,海綿骨量が増加し,皮質骨が異常に菲薄化していた.Sfrp4 欠損マウスに,可溶性 Bmp2 受容体(RAP-661)または抗スクレロスチン抗体を投与すると,皮質骨の欠損は補正された.
今回の研究で,パイル病が sFRP4 の欠損によって引き起こされること,皮質骨と海綿骨の恒常性が異なる機構で制御されること,皮質骨が適切な厚みと安定性を獲得するには sFRP4 に媒介される Wnt と BMP シグナル伝達のクロストーク制御が不可欠であることが示された.(スイス国立財団,米国国立衛生研究所から研究助成を受けた.)