October 13, 2016 Vol. 375 No. 15
エボラウイルス感染に対する ZMapp の無作為化比較試験
A Randomized, Controlled Trial of ZMapp for Ebola Virus Infection
The PREVAIL II Writing Group
3 種類のモノクローナル抗体の混合である ZMapp が,エボラウイルス病(EVD)の有望な免疫系療法であることが,非ヒト霊長類を対象とした研究データから示唆されている.
2015 年 3 月,ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)法で診断された西アフリカの EVD 患者を対象に,現在の標準治療に加えて ZMapp を投与する治療と,現在の標準治療単独とを比較する無作為化比較試験を開始した.あらゆる年齢の適格患者を,現在の標準治療を受ける群と,現在の標準治療+ZMapp の点滴静注を 3 回(50 mg/kg 体重を 3 日ごと)受ける群に,1:1 の割合で無作為に割り付けた.患者を,ベースラインのウイルスに対する PCR サイクルの閾値(≦22 または >22)と登録国に基づいて層別化した.経口ファビピラビルは,ギニアにおける現在の標準治療の一部であった.主要エンドポイントは 28 日死亡率とした.
リベリア,シエラレオネ,ギニア,米国の施設で計 72 例を登録した.評価しえた 71 例のうち 21 例が死亡し,致死率は全体で 30%であった.内訳は,現在の標準治療単独群 35 例中 13 例(37%),現在の標準治療+ZMapp 群 36 例中 8 例(22%)であった.現在の標準治療+ZMapp の現在の標準治療単独に対する優越性は,事後確率が 91.2%で,事前に設定した閾値の 97.5%に達しなかった.頻度論的解析でも同様の結果であった(ZMapp による死亡率の絶対差 -15 パーセントポイント,95%信頼区間 -36~7).ベースラインのウイルス量は,すべての年齢層で死亡率と入院期間を強く予測した.
EVD 治療薬候補である ZMapp の今回の無作為化比較試験において,ZMapp の推定効果は有益であるように思われたが,事前に設定した有効性の統計的閾値に達しなかった.(米国国立アレルギー感染症研究所ほかから研究助成を受けた.PREVAIL II 試験:ClinicalTrials.gov 登録番号 NCT02363322)