November 10, 2016 Vol. 375 No. 19
2 型糖尿病患者におけるセマグルチドと心血管転帰
Semaglutide and Cardiovascular Outcomes in Patients with Type 2 Diabetes
S.P. Marso and Others
2 型糖尿病の新規治療薬は,患者における過度の心血管リスクを排除するため心血管安全性を確立する必要性があることが規制当局のガイダンスに明示されている.約 1 週間という長い半減期をもつグルカゴン様ペプチド 1 アナログのセマグルチド(semaglutide)が,2 型糖尿病患者の心血管系にどのような影響を及ぼすかは明らかにされていない.
標準レジメンで治療中の 2 型糖尿病患者 3,297 例を,週 1 回セマグルチド(0.5 mg または 1.0 mg)を投与する群とプラセボを投与する群に無作為に割り付け,104 週間投与した.主要複合転帰は心血管死亡,非致死的心筋梗塞,非致死的脳卒中のいずれかの初回発生とした.この主要転帰について,セマグルチドはプラセボに対して非劣性であるという仮説を立てた.非劣性マージンは,ハザード比の 95%信頼区間の上限 1.8 とした.
ベースラインでは,2,735 例(83.0%)が心血管疾患,慢性腎臓病,またはその両方を有していた.主要転帰は,セマグルチド群 1,648 例中 108 例(6.6%)と,プラセボ群 1,649 例中 146 例(8.9%)で発生した(ハザード比 0.74,95%信頼区間 [CI] 0.58~0.95,非劣性の P<0.001).非致死的心筋梗塞はセマグルチド群 2.9%,プラセボ群 3.9%で発生し(ハザード比 0.74,95% CI 0.51~1.08,P=0.12),非致死的脳卒中はそれぞれ 1.6%,2.7%で発生した(ハザード比 0.61,95% CI 0.38~0.99,P=0.04).心血管系の原因による死亡率は両群で同程度であった.腎症の新規発症または悪化が認められた割合はセマグルチド群のほうが低かったが,網膜症(硝子体出血,失明,硝子体内薬または光凝固術による治療を要する状態)を合併する割合が有意に高かった(ハザード比 1.76,95% CI 1.11~2.78,P=0.02).重篤な有害事象はセマグルチド群のほうが少なかったが,有害事象(主に消化器系)を原因とする投与中止はセマグルチド群のほうが多かった.
心血管リスクの高い 2 型糖尿病患者において,セマグルチドを投与した例では,プラセボを投与した例よりも心血管死亡,非致死的心筋梗塞,非致死的脳卒中の複合発生率が有意に低く,セマグルチドの非劣性が確認される結果となった.(Novo Nordisk 社から研究助成を受けた.SUSTAIN-6 試験:ClinicalTrials.gov 登録番号 NCT01720446)