December 22, 2016 Vol. 375 No. 25
1990~2015 年のアフリカにおける熱帯熱マラリア原虫による死亡の分布
Mapping Plasmodium falciparum Mortality in Africa between 1990 and 2015
P.W. Gething and Others
マラリア対策に資金が投じられるなかで,マラリアによる死亡の地域的ばらつきの評価は,定期的に報告されていない.われわれは,マラリアアトラスプロジェクトと世界の疾病負担研究(GBD)のデータを統合し,サハラ以南のアフリカ全域について 5 km 四方の区画ごとに 1990~2015 年のマラリア死亡率を推定した.
臨床的マラリアの発生率,抗マラリア薬の使用率,致死率,年齢別人口分布の地理的位置データ(緯度と経度)をもとにした時空間モデル化フレームワークを用いて,マラリアによる死亡率を推定した.
サハラ以南のアフリカ全域のマラリア死亡率は,2000 年の 10,000 人あたり 12.5(95%不確実区間 8.3~17.0)から 2015 年の 10,000 人あたり 5.4(95%不確実区間 3.4~7.9)へと減少し,過去 15 年間に全体で 57%減少したと推定された(95%不確実区間 46~65).これにより,年間死亡者数は 1,007,000 人(95%不確実区間 666,000~1,376,000)から 631,000 人(95%不確実区間 394,000~914,000)へと減少し,全体で 37%減少した(95%不確実区間 36~39).5 歳未満児におけるマラリアによる死亡の割合は,80%超(死亡率で 10,000 人あたり 25 超)から 40%未満(死亡率で 10,000 人あたり 1 未満)とばらつきがあった.マラリアによる死亡率が高く(10,000 人あたり 10 超),殺虫剤処理した蚊帳と抗マラリア薬の使用率が低かった(50%未満)地域は,ナイジェリア,アンゴラ,カメルーンの大部分と,中央アフリカ共和国,コンゴ,ギニア,赤道ギニアの一部などであった.
サハラ以南のアフリカ全域におけるマラリアによる死亡率は過去 15 年間に全体で 57%低下したと推定され,抗マラリア治療・感染予防プログラムの低い実施率に関連する死亡率の高い国がいくつか同定された.(ビル&メリンダ・ゲイツ財団ほかから研究助成を受けた.)