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August 4, 2016 Vol. 375 No. 5

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転移性前立腺癌男性における DNA 修復遺伝子の遺伝性変異
Inherited DNA-Repair Gene Mutations in Men with Metastatic Prostate Cancer

C.C. Pritchard and Others

背景

BRCA2 などの DNA 修復遺伝子の遺伝性変異は,致死的な前立腺癌のリスクが高いことに関連している.家族性素因の有無を問わず抽出した限局性前立腺癌男性での DNA 修復遺伝子における生殖細胞系列変異保有率はルーチン検査の根拠とするには低いが,転移性前立腺癌患者でのそのような変異の頻度は明らかにされていない.

方 法

転移性前立腺癌と診断された男性を癌の家族歴や診断時の年齢を問わず抽出し,692 例を対象とした.常染色体優性癌素因症候群に関連する 20 個の DNA 修復遺伝子の変異を評価するため,生殖細胞系列 DNA を単離し,多重配列解析を行った.

結 果

82 例(11.8%)で,DNA 修復遺伝子に有害と推定される生殖細胞系列変異が 84 個同定された.変異は,BRCA2(37 例 [5.3%]),ATM(11 例 [1.6%]),CHEK2(10 例 [データが存在する 534 例の 1.9%]),BRCA1(6 例 [0.9%]),RAD51D(3 例 [0.4%]),PALB2(3 例 [0.4%])など,16 個の遺伝子で認められた.変異の頻度に前立腺癌の家族歴の有無や診断時の年齢による差は認められなかった.全体では,転移性前立腺癌男性の DNA 修復遺伝子における生殖細胞系列変異の頻度は,高リスク例を含む限局性前立腺癌男性のコホート 499 例の 4.6%(P<0.001),エクソームアグリゲーションコンソーシアムの癌と診断されていない 53,105 例の 2.7%(P<0.001)を有意に上回った.

結 論

この多施設共同研究では,転移性前立腺癌男性の DNA 修復過程に関わる遺伝子における生殖細胞系列変異の発生率は 11.8%であり,限局性前立腺癌男性と比較して有意に高かった.転移性前立腺癌男性の DNA 修復遺伝子における生殖細胞系列変異の頻度に,診断時の年齢や前立腺癌の家族歴の有無による有意差は認められなかった.(スタンドアップトゥキャンサーほかから研究助成を受けた.)

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2016; 375 : 443 - 53. )