April 20, 2017 Vol. 376 No. 16
1 型糖尿病におけるエビデンスに基づく網膜症スクリーニングの頻度
Frequency of Evidence-Based Screening for Retinopathy in Type 1 Diabetes
The DCCT/EDIC Research Group
現在,1 型糖尿病歴 5 年の患者に糖尿病網膜症のスクリーニングとして推奨されているのは,増殖網膜症と臨床的に重要な黄斑浮腫を検出することを目的とした年 1 回の広角眼底検査である.これらの病態は,視力低下を防ぐために適切な時期に介入する必要がある.糖尿病のコントロールと合併症に関する試験(DCCT)とその長期追跡研究である糖尿病への介入と合併症に関する疫学(EDIC)研究の 30 年間に,6 ヵ月~4 年の間隔で眼底写真撮影が行われた.
DCCT/EDIC 研究で得られた眼底写真を用いて,網膜症スクリーニングの妥当な頻度を検討した.Markov モデルを用いて,当初の網膜症重症度が異なる患者集団(網膜症なし,軽症非増殖網膜症,中等症非増殖網膜症,重症非増殖網膜症)において,増殖糖尿病網膜症または臨床的に重要な黄斑浮腫へと進行する確率を決定した.モデルには,網膜症を進行させる既知の危険因子を使用した.
全体として,増殖糖尿病網膜症または臨床的に重要な黄斑浮腫へと進行する確率は,網膜症のスクリーニング検査を 4 年間隔で受けた網膜症なしの患者,3 年間隔で受けた軽症患者,6 ヵ月間隔で受けた中等症患者,3 ヵ月間隔で受けた重症患者では約 5%にとどまった.進行リスクは,平均糖化ヘモグロビン値とも密接に関連した.網膜症なしから,増殖糖尿病網膜症または臨床的に重要な黄斑浮腫へと進行するリスクは,糖化ヘモグロビン値が 6%の患者では 5 年間で 1.0%であったのに対し,10%の患者では 3 年間で 4.3%であった.20 年間で,われわれが用いたエビデンスに基づく実用的な計画により,眼検査の頻度は通常の年 1 回の検査と比較して 58%低くなり,大幅な費用節減となった.
患者の現在の網膜症重症度と糖化ヘモグロビン値に基づき,個別に網膜症スクリーニング計画を立てるわれわれのモデルにより,臨床的に重要な疾患の診断が遅れることなく,眼検査の頻度を抑えることができた.(米国国立糖尿病・消化器病・腎臓病研究所ほかから研究助成を受けた.DCCT 試験:ClinicalTrials.gov 登録番号 NCT00360815;EDIC 試験:ClinicalTrials.gov 登録番号 NCT00360893)