April 27, 2017 Vol. 376 No. 17
サイトカイン BAFF の過剰発現と自己免疫のリスク
Overexpression of the Cytokine BAFF and Autoimmunity Risk
M. Steri and Others
自己免疫疾患のゲノムワイド関連解析により,ゲノム上で数百の感受性領域がマップされている.しかし,原因遺伝子が同定された関連シグナルはごく少数であり,原因となる多様体や機序が明らかになったものはさらに少ない.自己免疫疾患のリスクと免疫の定量的変数の両方に影響を及ぼす DNA 多様体の同時発生的関連は,疾患発症機序と薬剤標的経路の検討に有用な情報を提供する.
イタリア・サルデーニャ島の症例対照サンプルを用いて,多発性硬化症のゲノムワイド関連解析を行い,その後,全身性エリテマトーデス(SLE)における TNFSF13B 座位特異的関連を検討した.免疫の定量的変数の詳細な表現型解析,配列に基づく精密マッピング,集団間・表現型間の比較解析,遺伝子発現解析を,原因多様体を同定し,その作用機序を明らかにする目的で行った.正の選択のシグネチャーも調査した.
サイトカインであり薬剤標的でもある B 細胞活性化因子(BAFF)をコードする TNFSF13B の多様体の 1 つが,多発性硬化症にも SLE にも関連していた.この疾患リスクアレルは,可溶性 BAFF,B リンパ球,免疫グロブリンの上昇によりアップレギュレートされた液性免疫にも関連していた.原因多様体も同定された.GCTGT→A(A がリスクアレル)という挿入欠失多様体で,これにより転写産物が短くなり,マイクロ RNA 阻害を免れ,可溶性 BAFF 産生が増加し,その結果液性免疫がアップレギュレートされた.集団間解析での遺伝子シグネチャーから,この自己免疫多様体が進化的に有利であることが示されたが,それはマラリア耐性が増強したことによるものである可能性が高い.
TNFSF13B の多様体の 1 つが,多発性硬化症と SLE に関連しており,その影響が,集団,細胞,分子レベルで明らかにされた.(イタリア多発性硬化症財団ほかから研究助成を受けた.)