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February 9, 2017 Vol. 376 No. 6

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膝関節鏡視下手術後および下肢ギプス固定後の抗血栓療法
Thromboprophylaxis after Knee Arthroscopy and Lower-Leg Casting

R.A. van Adrichem and Others

背景

膝関節鏡視下手術後または下肢ギプス固定後,臨床的に明らかな静脈血栓塞栓症を予防する目的で抗血栓療法を行うことに疑問がもたれている.われわれは,これらの処置後,抗凝固療法を行った患者と行わなかった患者とで,症候性静脈血栓塞栓症の発症率を比較した.

方 法

2 件の並行群間実用的多施設共同無作為化比較非盲検試験を行い,盲検下で転帰を評価した.POT-KAST 試験は膝関節鏡視下手術を行う患者を対象とし,POT-CAST 試験は下肢ギプス固定を行う患者を対象とした.患者を,低分子ヘパリンの予防投与(POTKAST 試験では術後 8 日間,POT-CAST 試験では全固定期間)を行う群と,抗凝固療法を行わない群に割り付けた.主要評価項目は,処置後 3 ヵ月以内の症候性静脈血栓塞栓症の累積発症率と重大な出血の累積発生率とした.

結 果

POT-KAST 試験では 1,543 例を無作為化し,うち 1,451 例を intention-to-treat 解析の対象とした.静脈血栓塞栓症は治療群 731 例中 5 例(0.7%),対照群 720 例中 3 例(0.4%)で発症した(相対リスク 1.6,95%信頼区間 [CI] 0.4~6.8,リスクの絶対差 0.3 パーセントポイント,95% CI -0.6~1.2).重大な出血は治療群 1 例(0.1%),対照群 1 例(0.1%)で発生した(リスクの絶対差 0 パーセントポイント,95% CI -0.6~0.7).POT-CAST 試験では 1,519 例を無作為化し,うち 1,435 例を intention-to-treat 解析の対象とした.静脈血栓塞栓症は治療群 719 例中 10 例(1.4%),対照群 716 例中 13 例(1.8%)で発症した(相対リスク 0.8,95% CI 0.3~1.7,リスクの絶対差 -0.4 パーセントポイント,95% CI -1.8~1.0).重大な出血イベントは発生しなかった.両試験で,もっとも頻度の高かった有害事象は感染であった.

結 論

2 件の試験の結果から,膝関節鏡視下手術後 8 日間,またはギプスによる全固定期間に行う低分子ヘパリンの予防投与は,症候性静脈血栓塞栓症の予防に有効ではなかった.(オランダ健康研究開発機構から研究助成を受けた.POT-KAST 試験:ClinicalTrials.gov 登録番号 NCT01542723,POT-CAST 試験:ClinicalTrials.gov 登録番号 NCT01542762)

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2017; 376 : 515 - 25. )