February 16, 2017 Vol. 376 No. 7
関節リウマチに対するバリシチニブとプラセボまたはアダリムマブとの比較
Baricitinib versus Placebo or Adalimumab in Rheumatoid Arthritis
P.C. Taylor and Others
バリシチニブ(baricitinib)は,関節リウマチ患者において治療的価値をもつ可能性のある,ヤヌスキナーゼ JAK1・JAK2 の可逆的経口阻害薬である.
52 週間の第 3 相二重盲検プラセボ対照実薬対照試験を行い,メトトレキサートによる基礎療法を受けている活動性関節リウマチ患者 1,307 例を,プラセボを投与する群(24 週後にバリシチニブに切り替える),バリシチニブ 4 mg を 1 日 1 回投与する群,アダリムマブ(抗腫瘍壊死因子αモノクローナル抗体)40 mg を隔週で投与する群に,3:3:2 の割合で無作為に割り付けた.多重比較の補正後に評価した項目は,12 週の時点での,米国リウマチ学会基準での 20%改善(ACR20 改善)(主要エンドポイント),28 関節疾患活動性スコア(DAS28),健康評価質問票の機能障害指数,簡易疾患活動性指標,および 24 週の時点での X 線上の関節損傷の進行とし,van der Heijde 修正総 Sharp スコア(mTSS)(0~448 のスコアで,スコアが高いほど関節の構造的損傷が大きいことを示す)で評価した.
12 週の時点で ACR20 改善を達成した患者は,バリシチニブ群のほうがプラセボ群より多かった(主要エンドポイント 70% 対 40%,P<0.001).主な副次的エンドポイントはすべて達成され,たとえば,24 週の時点での mTSS による X 線上の関節損傷の進行はバリシチニブ群ではプラセボ群と比較して抑制されており(ベースラインからの平均変化量 0.41 対 0.90,P<0.001),12 週の時点でのバリシチニブ群での ACR20 改善率はアダリムマブ群と比較して高かった(70%対 61%,P=0.014).感染症などの有害事象の頻度は,24 週を通して,バリシチニブ群とアダリムマブ群がプラセボ群より高かった.癌は 5 例(バリシチニブ群 2 例,プラセボ群 3 例)で報告された.バリシチニブは,好中球数の減少,クレアチニン上昇,低比重リポ蛋白コレステロール上昇に関連していた.
メトトレキサートの効果が不十分である関節リウマチ患者において,バリシチニブは,プラセボ,アダリムマブと比較して,有意な臨床的改善に関連していた.(Eli Lilly 社,Incyte 社から研究助成を受けた.ClinicalTrials.gov 登録番号 NCT01710358)