February 23, 2017 Vol. 376 No. 8
ディジョージ症候群における腎奇形の遺伝的誘発因子
Genetic Drivers of Kidney Defects in the DiGeorge Syndrome
E. Lopez-Rivera and Others
ディジョージ症候群は,微細欠失症候群のなかでもっとも頻度が高く,心臓,神経系,腎臓などの多臓器を侵す.染色体 22q11.2 の欠失によって引き起こされるが,腎奇形の遺伝的誘発因子は明らかにされていない.
先天性腎尿路奇形患者 2,080 例と対照 22,094 例の 2 つのコホートで,構造多様体のゲノムワイド探索を行った.別の先天性腎尿路奇形患者 586 例のサンプルを用いて,全エクソーム解析または標的再配列決定を行った.ゼブラフィッシュとマウスを用いて機能解析も行った.
22q11.2 のヘテロ接合性欠失を,先天性腎尿路奇形患者の 1.1%,対照集団の 0.01%で同定した(オッズ比 81.5,P=4.5×10-14).ディジョージ症候群における腎疾患の主な誘発因子を,9 遺伝子を含む 370 kb の領域に同定した.ゼブラフィッシュ胚では,snap29,aifm3,crkl の機能喪失を誘発させると腎奇形が生じ,crkl の機能喪失は単独で腎奇形を誘発するのに十分であった.先天性腎尿路奇形患者 586 例のうち 5 例は,CRKL に,新規に同定された,未成熟終止コドンなどの,蛋白機能を変化させるヘテロ接合性多様体を有していた.マウスモデルでは,Crkl を不活性化させると,先天性腎尿路奇形患者で観察されたものに類似した発生異常が誘発された.
ディジョージ症候群および孤発性先天性腎尿路奇形における腎奇形を引き起こす因子として,22q11.2 上の 370 kb に共通する欠失が同定された.この座位の 9 遺伝子のうち SNAP29,AIFM3,CRKL が表現型に重要であると考えられ,CRKL のハプロ不全が腎奇形を誘発する主要な因子として浮上した.(米国国立衛生研究所ほかから研究助成を受けた.)