クローン性造血とアテローム性動脈硬化性心血管疾患のリスク
Clonal Hematopoiesis and Risk of Atherosclerotic Cardiovascular Disease
S. Jaiswal and Others
未確定の潜在能をもつクローン性造血(clonal hematopoiesis of indeterminate potential:CHIP)は,ほかに血液学的異常がない人に体細胞クローンの増殖を認めることと定義され,高齢者で頻度が高く,造血器腫瘍リスクが高いことに関連している.われわれは以前,CHIP とアテローム性心血管疾患との関連について予備的エビデンスを見出したが,この関連の性質は不明であった.
症例対照研究 4 件の冠動脈疾患患者 4,726 例と対照 3,529 例のサンプルを用いて,末梢血細胞における CHIP を検出するため全エクソーム解析を行い,CHIP の存在と冠動脈疾患との関連を検討した.因果関係を評価するため,アテローム性動脈硬化発症マウスの造血細胞において,クローン性造血に関連する変異遺伝子で 2 番目に多い Tet2 の機能を阻害した.
2 つの前向きコホートのコホート内症例対照分析では,CHIP 保有者は,冠動脈疾患リスクが非保有者の 1.9 倍(95%信頼区間 [CI] 1.4~2.7)高かった.早期発症心筋梗塞を評価するための 2 つの後ろ向きコホートの症例対照分析では,CHIP 保有者は,心筋梗塞リスクが非保有者の 4.0 倍(95% CI 2.4~6.7)高かった.DNMT3A,TET2,ASXL1,JAK2 の変異は,それぞれ個別に冠動脈疾患に関連していた.これらの変異を有する CHIP 保有者は,冠動脈のアテローム性硬化負荷の指標である冠動脈石灰化も高度であった.ホモ接合またはヘテロ接合の Tet2 ノックアウトマウスの骨髄を移植された高コレステロール血症発症マウスは,対照骨髄を移植されたマウスよりも,大動脈基部と大動脈のアテローム性硬化病変が大きかった.Tet2 ノックアウトマウスのマクロファージの解析により,アテローム性動脈硬化に寄与する数種のケモカイン,サイトカインの遺伝子発現が亢進していることが示された.
末梢血細胞における CHIP の存在は,ヒトでは冠動脈疾患リスクが 2 倍近く高いことに関連し,マウスではアテローム性動脈硬化促進に関連していた.(米国国立衛生研究所ほかから研究助成を受けた.)