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November 2, 2017 Vol. 377 No. 18

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乳児発症性脊髄性筋萎縮症におけるヌシネルセンと偽処置対照との比較
Nusinersen versus Sham Control in Infantile-Onset Spinal Muscular Atrophy

R.S. Finkel and Others

背景

脊髄性筋萎縮症は,生存運動ニューロン(SMN)蛋白の発現量が少ないことで生じる常染色体劣性神経筋疾患である.ヌシネルセンは,SMN2 メッセンジャー RNA 前駆体のスプライシングを修飾することにより,完全長 SMN 蛋白の産生を促進するアンチセンスオリゴヌクレオチド製剤である.

方 法

脊髄性筋萎縮症乳児を対象に,ヌシネルセンの有効性と安全性を評価する無作為化二重盲検偽処置対照第 3 相試験を行った.運動マイルストーンへの効果(Hammersmith 乳児神経学的検査の結果に基づく)と,無イベント生存期間(死亡するまで,または永続的な呼吸補助を必要とするまでの期間)を主要評価項目とした.スクリーニング時点での罹病期間別の全生存期間,サブグループ解析における無イベント生存期間などを副次的評価項目とした.事前に規定した中間解析では,1 つ目の主要評価項目のみを評価した.最終解析では,全体の第 1 種の過誤率を 0.05 で制御するために,段階的検定法を用いて 2 つ目の主要評価項目と副次的評価項目のすべてを評価した.

結 果

中間解析において,運動マイルストーンに効果を認めた割合は,ヌシネルセン群のほうが対照群よりも有意に高かったため(51 例中 21 例 [41%] 対 27 例中 0 例 [0%],P<0.001),試験は早期に中止された.最終解析でも,運動マイルストーンに効果を認めた割合は,ヌシネルセン群のほうが対照群よりも有意に高く(73 例中 37 例 [51%] 対 37 例中 0 例 [0%]),無イベント生存の確率は,ヌシネルセン群のほうが対照群よりも高かった(死亡または永続的呼吸補助使用のハザード比 0.53,P=0.005).全生存の確率は,ヌシネルセン群のほうが対照群よりも高く(死亡のハザード比 0.37,P=0.004),スクリーニング時点での罹病期間が短かった例のほうが,長かった例よりもヌシネルセンの利益が得られる割合が高かった.有害事象の発現率と重症度は 2 群で同程度であった.

結 論

脊髄性筋萎縮症の患児において,ヌシネルセン群は対照群よりも,生存し,運動機能が改善する確率が高かった.ヌシネルセンの利益を最大限に得るには,治療の早期開始が必要である可能性がある.(Biogen 社,Ionis Pharmaceuticals 社から研究助成を受けた.ENDEAR 試験:ClinicalTrials.gov 登録番号 NCT02193074)

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2017; 377 : 1723 - 32. )