November 9, 2017 Vol. 377 No. 19
大動脈弁置換術および僧帽弁置換術における機械弁と生体弁との比較
Mechanical or Biologic Prostheses for Aortic-Valve and Mitral-Valve Replacement
A.B. Goldstone and Others
大動脈弁置換術または僧帽弁置換術を受ける患者には,機械弁または生体弁が使用される.生体弁は,その使用を支持するエビデンスが限られているにもかかわらず,選好されることが増えている.
1996 年から 2013 年にかけて,カリフォルニア州で,機械弁または生体弁による大動脈弁または僧帽弁の一次置換術を受けた患者の,逆確率で加重したコホートの長期死亡率と,再手術率,脳卒中発生率,出血発生率を比較した.弁の位置(大動脈弁 対 僧帽弁)をもとに,患者を年齢群で層別化した.
1996 年から 2013 年にかけて,大動脈弁置換術と僧帽弁置換術における生体弁の使用率は,それぞれ 11.5%から 51.6%,16.8%から 53.7%へと大幅に上昇した.大動脈弁置換術を受けた患者では,生体弁による置換は,機械弁による置換と比較して 15 年死亡率が有意に高いことに,45~54 歳では関連が認められたが(15 年の時点で 30.6% 対 26.4%,ハザード比 1.23,95%信頼区間 [CI] 1.02~1.48,P=0.03),55~64 歳では関連は認められなかった.僧帽弁置換術を受けた患者では,生体弁による置換は,機械弁による置換と比較して 15 年死亡率が有意に高いことに,40~49 歳(44.1% 対 27.1%,ハザード比 1.88,95% CI 1.35~2.63,P<0.001)と 50~69 歳(50.0% 対 45.3%,ハザード比 1.16,95% CI 1.04~1.30,P=0.01)で関連が認められた.再手術率は,生体弁のレシピエントのほうが機械弁のレシピエントよりも有意に高かった.機械弁のレシピエントでは,生体弁のレシピエントと比較して出血の累積発生率が高く,一部の年齢群では脳卒中の累積発生率も高かった.
機械弁に関連する,生体弁との比較における長期死亡率に対する有益性は,僧帽弁置換術を受けた患者では 70 歳に達するまで,大動脈弁置換術を受けた患者では 55 歳に達するまで持続した.(米国国立衛生研究所,米国医療品質研究調査機構から研究助成を受けた.)