December 14, 2017 Vol. 377 No. 24
インドにおけるコーチングに基づく WHO 安全出産チェックリストプログラムの成果
Outcomes of a Coaching-Based WHO Safe Childbirth Checklist Program in India
K.E.A. Semrau and Others
資源の乏しい環境における施設出産率はこの 20 年間で劇的に上昇したが,ケアの質には依然差があり,死亡率は高いままである.世界保健機関(WHO)の安全出産チェックリスト(Safe Childbirth Checklist)は,質の改善を目的としたツールであり,出産転帰の改善との関連が示されている手順に対する組織的アドヒアランスを向上させる.
安全出産チェックリストをコーチングに基づき 8 ヵ月間導入する BetterBirth プログラムの,出産後 7 日以内の周産期死亡,母体死亡,母体の重度合併症から成る複合転帰に対する効果を検証するために,インドのウッタルプラデシュ州の 24 地域の 2 施設を 1 組とする 60 組で,マッチドペア比較によるクラスター無作為化試験を行った.出産の 8~42 日後に評価した転帰を,クラスタリングとマッチングで補正し,介入群と対照群とで比較した.また,介入開始から 2 ヵ月後と 12 ヵ月後の時点で,15 組のマッチさせた医療施設ペアを対象に,出産に関わる 18 項目の必須手順に対する出産介助者のアドヒアランスを比較した.
適格女性 161,107 例のうち,157,689 例(97.9%)を登録し,母児 157,145 組(99.7%)の 7 日間の転帰を明らかにした.観察された出産 4,888 件における出産介助者の手順アドヒアランスの平均は,介入群のほうが対照群よりも有意に高かった(2 ヵ月時点 72.8% 対 41.7%,12 ヵ月時点 61.7% 対 43.9%,いずれの比較も P<0.001).しかし,複合主要転帰に群間で有意差は認められず(介入群 15.1%,対照群 15.3%,相対リスク 0.99,95%信頼区間 0.83~1.18,P=0.90),母体・周産期の副次的有害転帰についても認められなかった.
出産の必須手順に対する出産介助者のアドヒアランスは,WHO の安全出産チェックリストプログラムをコーチングに基づき導入した施設のほうが,導入しなかった施設よりも高かったが,母体死亡・周産期死亡,母体の合併症に群間で有意差は認められなかった.(ビル&メリンダ・ゲイツ財団による研究助成を受けた.Clinical Trials.gov 登録番号 NCT02148952)