September 7, 2017 Vol. 377 No. 10
早期慢性閉塞性肺疾患におけるチオトロピウム
Tiotropium in Early-Stage Chronic Obstructive Pulmonary Disease
Y. Zhou and Others
軽症または中等症の慢性閉塞性肺疾患(COPD)患者は,症状がほとんどないため,薬剤を投与されることはまれである.軽症または中等症の COPD 患者に対するチオトロピウムの長期投与が,肺機能を向上させ,肺機能の低下を抑制するという仮説を立てた.
中国で行われた多施設共同無作為化二重盲検プラセボ対照試験で,慢性閉塞性肺疾患に対するグローバルイニシアチブ(GOLD)ステージが 1(軽症)または 2(中等症)の COPD 患者 841 例を,チオトロピウム(18 mg)を 1 日 1 回吸入する群(419 例)とマッチさせたプラセボを吸入する群(422 例)に無作為に割り付け,2 年間投与した.主要エンドポイントは,ベースラインから 24 ヵ月までの気管支拡張薬吸入前の 1 秒量(FEV1)の変化の群間差とした.副次的エンドポイントは,ベースラインから 24 ヵ月までの気管支拡張薬吸入後の FEV1 の変化の群間差,30 日目から 24 ヵ月までの気管支拡張薬吸入前・吸入後の FEV1 の年間低下量の群間差などとした.
無作為化した 841 例のうち,チオトロピウム群の 388 例とプラセボ群の 383 例を完全な解析の対象に含めた.試験期間を通して,チオトロピウム投与例の FEV1 は,プラセボ投与例よりも高かった(差の平均の範囲は気管支拡張薬吸入前 127~169 mL,吸入後 71~133 mL;すべての比較について P<0.001).気管支拡張薬吸入前の FEV1 の平均(±SE)年間低下量はチオトロピウム群 38±6 mL,プラセボ群 53±6 mL であり,有意な抑制は認められなかった(差 15 mL,95%信頼区間 [CI] -1~31,P=0.06).一方,気管支拡張薬吸入後の FEV1 の年間低下量は,チオトロピウム群でプラセボ群よりも有意に小さかった(29±5 mL 対 51±6 mL,差 22 mL [95% CI 6~37],P=0.006).有害事象の発現率は 2 群でほぼ同程度であった.
GOLD ステージが 1 または 2 の COPD 患者において,チオトロピウム投与例のほうがプラセボ投与例よりも 24 ヵ月の時点での FEV1 が高く,気管支拡張薬吸入後の FEV1 の年間低下量が抑制された.(Boehringer Ingelheim 社ほかから研究助成を受けた.Tie-COPD 試験:ClinicalTrials.gov 登録番号 NCT01455129)