冠動脈疾患における侵襲的治療と保存的治療との健康状態の転帰の比較
Health-Status Outcomes with Invasive or Conservative Care in Coronary Disease
J.A. Spertus and Others
ISCHEMIA 試験で,血管造影による評価と血行再建を行う侵襲的戦略は,中等度または重度の虚血を有する安定虚血性心疾患患者の臨床イベントを減少させなかった.この試験の副次的目的は,これらの患者で,狭心症に関連する健康状態を評価することであった.
参加者を侵襲的治療戦略(2,295 例)と保存的治療戦略(2,322 例)に無作為に割り付け,無作為化時と 1.5,3,6 ヵ月の時点,その後は 6 ヵ月ごとに,シアトル狭心症質問票(SAQ)を用いて狭心症に関連する症状,機能,QOL を評価した.ベイズ統計の枠組みで累積確率の混合効果モデルを用いて,治療群間の差を推定した.この健康状態の解析では,SAQ サマリースコア(0~100 で,スコアが高いほど健康状態が良好であることを示す)を主要評価項目とした.すべての解析は,対象集団全体と,ベースライン時の狭心症の頻度別に行った.
ベースラインの時点で,過去 1 ヵ月間狭心症を発症していないと報告した患者の割合は 35%であった.SAQ サマリースコアは両群とも上昇し,3,12,36 ヵ月の時点での上昇量は,それぞれ侵襲的戦略群のほうが保存的戦略群よりも 4.1 ポイント(95%信用区間 3.2~5.0),4.2 ポイント(95%信用区間 3.3~5.1),2.9 ポイント(95%信用区間 2.2~3.7)大きかった.差はベースライン時の狭心症の頻度が高かった参加者でより大きかった(狭心症を毎日または毎週発症した参加者と発症しなかった参加者との比較で,3 ヵ月の時点 8.5 ポイント 対 0.1 ポイント,36 ヵ月の時点 5.3 ポイント 対 1.2 ポイント).
中等度または重度の虚血を有する試験集団全体(ベースラインで狭心症の既往がなかった 35%の参加者を含む)では,侵襲的戦略に無作為に割り付けられた患者のほうが,保存的戦略に割り付けられた患者よりも狭心症に関連する健康状態が大きく改善した.集団全体での,侵襲的戦略を支持するそれほど大きくない平均差は,無症状の患者における最小の差と,ベースライン時に狭心症の既往があった患者におけるより大きな差を反映している.(米国国立心臓・肺・血液研究所ほかから研究助成を受けた.ISCHEMIA 試験:ClinicalTrials.gov 登録番号 NCT01471522)