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April 16, 2020 Vol. 382 No. 16

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統合失調症の治療のための D2 受容体に結合しない薬剤
A Non–D2-Receptor-Binding Drug for the Treatment of Schizophrenia

K.S. Koblan and Others

背景

SEP-363856 は,ドパミン D2 受容体には作用しないが,微量アミン関連受容体 1(TAAR1)と 5-ヒドロキシトリプタミン 1A(5-HT1A)受容体に対するアゴニスト活性を有する経口化合物である.この薬剤は,統合失調症のサイコーシスを治療するための新規クラスの向精神薬となる可能性がある.

方 法

急性増悪期の統合失調症を有する成人における SEP-363856 の有効性と安全性を評価する無作為化比較試験を行った.患者を,SEP-363856(50 mg または 75 mg)を 1 日 1 回 4 週間投与する群とプラセボ群に 1:1 の割合で無作為に割り付けた.主要エンドポイントは,4 週の時点における陽性・陰性症状評価尺度(PANSS;30~210 で,スコアが高いほど精神病症状が重度であることを示す)の合計スコアのベースラインからの変化量とした.副次的エンドポイントは,臨床全般印象–重症度(CGI-S)尺度や簡易陰性症状尺度(BNSS)などの 8 項目のスコアのベースラインからの変化量とした.

結 果

120 例を SEP-363856 群,125 例をプラセボ群に割り付けた.ベースラインの PANSS の合計スコアの平均は,SEP-363856 群が 101.4,プラセボ群が 99.7 であり,4 週の時点での変化量の平均はそれぞれ -17.2 ポイント,-9.7 ポイントであった(最小二乗平均差 -7.5 ポイント,95%信頼区間 -11.9~-3.0,P=0.001).4 週の時点での CGI-S スコアと BNSS スコアの低下は全体的に主要エンドポイントと同様の方向性を示したが,多重比較の補正は行っていない.SEP-363856 による有害事象は傾眠,消化器症状などであり,SEP-363856 群では心臓突然死が 1 件発生した.錐体外路症状の頻度と,脂質値,糖化ヘモグロビン値,プロラクチン値の変化量は 2 群で同程度であった.

結 論

急性増悪期の統合失調症患者を対象とした 4 週間の試験において,D2 受容体に結合しない抗精神病薬である SEP-363856 を投与した患者では,プラセボを投与した患者よりも PANSS の合計スコアのベースラインからの低下が大きかった.統合失調症患者に対する SEP-363856 の作用と副作用,および既存薬による治療と比較した有効性を確認するには,より長期かつ大規模な試験が必要である.(サノビオン・ファーマシューティカルズ社から研究助成を受けた.ClinicalTrials.gov 登録番号 NCT02969382)

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2020; 382 : 1497 - 506. )