HIV 感染成人の結核に対する系統的治療と検査に基づく治療との比較
Systematic or Test-Guided Treatment for Tuberculosis in HIV-Infected Adults
F.-X. Blanc and Others
結核とヒト免疫不全ウイルス(HIV)の負担の大きい地域では,すでに重度の免疫不全状態で抗レトロウイルス療法(ART)を開始する HIV 感染成人が多い.このような患者では ART 開始後の死亡率が高く,死因として多いのは結核と侵襲性細菌感染症である.
ART 歴のない,CD4 陽性 T 細胞数 100/mm3 未満の HIV 感染成人を対象に,結核に対する経験的治療を,検査に基づく治療と比較する 48 週間の試験を行った.コートジボワール,ウガンダ,カンボジア,ベトナムで組み入れた患者を,スクリーニング(Xpert MTB/RIF 検査,尿中リポアラビノマンナン検査,胸部 X 線撮影)を行い結核の治療を開始すべきかどうかを決定する群と,リファンピン(rifampin),イソニアジド,エタンブトール,ピラジナミドを 2 ヵ月間連日投与し,その後リファンピンとイソニアジドを 4 ヵ月間連日投与する経験的治療を系統的に行う群に,1:1 の割合で無作為に割り付けた.主要エンドポイントは全死因死亡または侵襲性細菌感染症の複合とし,無作為化後 24 週の時点(主要解析)または 48 週の時点で評価した.
系統的治療群 522 例,検査に基づく治療群 525 例を解析対象とした.24 週の時点で,全死因死亡または侵襲性細菌感染症の発生率(最初に発生したイベントの 100 患者年あたりの件数)は,系統的治療群 19.4,検査に基づく治療群 20.3 であった(補正ハザード比 0.95,95%信頼区間 [CI] 0.63~1.44).48 週の時点ではそれぞれ 12.8 と 13.3 であった(補正ハザード比 0.97,95% CI 0.67~1.40).24 週の時点で,結核の確率は系統的治療群のほうが検査に基づく治療群よりも低かったが(3.0% 対 17.9%,補正ハザード比 0.15,95% CI 0.09~0.26),グレード 3 または 4 の薬剤関連有害事象の確率は系統的治療群のほうが高かった(17.4% 対 7.2%,補正ハザード比 2.57,95% CI 1.75~3.78).重篤な有害事象の発現頻度は系統的治療群のほうが高かった.
ART 歴がなく,重度の免疫不全状態にある HIV 感染成人において,結核の系統的治療は,24 週間もしくは 48 週間の死亡または侵襲性細菌感染症の発生率の低下に関して検査に基づく治療よりも優れておらず,グレード 3 または 4 の有害事象の発現がより多いことと関連していた.(フランス国立エイズ・ウイルス性肝炎研究機構から研究助成を受けた.STATIS ANRS 12290 試験:ClinicalTrials.gov 登録番号 NCT02057796)