January 2, 2020 Vol. 382 No. 1
病院の合併および買収後に生じる診療の質における変化
Changes in Quality of Care after Hospital Mergers and Acquisitions
N.D. Beaulieu and Others
この 20 年間に病院業界では相当な統合が進んでおり,そのペースは 2010 年以降加速している.複数の研究が,病院の合併により民間保険加入患者の金銭的負担が増えていることを示しているが,診療の質への影響に関する調査は限られている.
2007~16 年の診療の質に関する 4 つの指標(臨床プロセスの指標の複合,患者経験の指標の複合,死亡率,退院後の再入院率)の成績についてのメディケア請求データおよび病院比較(Hospital Compare)データと,2009~13 年に発生した病院の合併と買収のデータを用いて,買収された病院における買収前後の成績の変化を,所有権に変化がなかった対照病院における同時期の変化と比較する difference-in-differences 分析を行った.
研究サンプルには,買収された病院 246 ヵ所と対照病院 1,986 ヵ所が含まれた.買収は,患者経験の指標の成績における中等度の差分の低下(補正後の差の変化 -0.17 SD,95%信頼区間 [CI] -0.26~-0.07,P=0.002,この変化は 50 パーセンタイルから 41 パーセンタイルへの低下に相当)と関連し,30 日再入院率(-0.10 パーセントポイント,95% CI -0.53~0.34,P=0.72)や,30 日死亡率(-0.03 パーセントポイント,95% CI -0.20~0.14,P=0.72)における有意な差分の変化とは関連しなかった.買収された病院では,臨床プロセスの指標の成績に有意な差分の改善(0.22 SD,95% CI 0.05~0.38,P=0.03)が認められたが,差分の改善は買収前に生じたため,所有権の変化に起因すると結論付けることはできなかった.
他の病院または病院システムによる病院の買収は,患者経験の中等度の悪化と関連し,再入院率や死亡率の有意な変化とは関連しなかった.プロセスの質に関する指標への影響は,結論的ではなかった.(米国医療品質研究調査機構から研究助成を受けた.)