December 17, 2020 Vol. 383 No. 25
隔離期間中の海兵隊員における SARS-CoV-2 の伝播
SARS-CoV-2 Transmission among Marine Recruits during Quarantine
A.G. Letizia and Others
重症急性呼吸器症候群コロナウイルス 2(SARS-CoV-2)の伝播を制御するための公衆衛生対策の有効性は,若年成人では十分に研究されていない.
米海兵隊の新兵に隔離を行い,SARS-CoV-2 感染を調査した.研究参加に志願した新兵は,2 週間の自宅隔離後,閉鎖された大学のキャンパスで,マスク着用,社会的距離の確保,毎日の体温・症状のモニタリングなどを行う監視下での隔離を 2 週間受けた.また,キャンパス到着時から監視下での隔離 2 日目までの期間と,7 日目,14 日目に採取した鼻腔ぬぐい液の,定量的ポリメラーゼ連鎖反応(qPCR)法による SARS-CoV-2 検査を受けた.研究参加に志願しなかった新兵は,隔離期間の終了時である 14 日目にのみ qPCR 検査を受けた.クラスターの同定と感染の疫学的特徴の評価のため,感染した参加者から得たウイルスゲノムの系統解析を行った.
1,848 例が研究に参加した.キャンパス到着後 2 日以内に 16 例(0.9%)が SARS-CoV-2 陽性と判定され,うち 15 例は無症状であった.さらに 35 例(1.9%)が,7 日目または 14 日目に陽性と判定された.いずれかの時点で陽性と判定された参加者計 51 例中 5 例(9.8%)には,qPCR 陽性となる前の 1 週間に症状があった.研究に志願しなかった新兵のうち,14 日目に qPCR 検査の結果が得られた 1,554 例中 26 例(1.7%)が陽性と判定された.毎日の症状モニタリングの結果をもとに行われた臨床的 qPCR 検査では,SARS-CoV-2 感染は同定されなかった.陽性の参加者 32 例の 36 検体の SARS-CoV-2 ゲノムを解析した結果,18 例で 6 つの感染クラスターが明らかになった.疫学的解析により,ルームメイト間や同一小隊内など,複数の特定の場所に限定された伝播が証明された.
海兵隊の新兵のうち,監視下での隔離開始時の検査では SARS-CoV-2 陰性であった者の約 2%と,過去の感染の有無が不明であった者の 2%弱が,14 日目までに陽性と判定された.陽性と判定された新兵の大部分は無症状であり,毎日の症状モニタリングでは感染は検出されなかった.感染クラスターは小隊内で発生した.(米国国防保健局ほかから研究助成を受けた.)