円形脱毛症に対するバリシチニブの 2 件の第 3 相試験
Two Phase 3 Trials of Baricitinib for Alopecia Areata
B. King and Others
円形脱毛症は,頭髪,眉毛,睫毛の急速な脱毛を特徴とする自己免疫疾患であり,治療法は限られている.バリシチニブはヤヌスキナーゼ 1 および 2 の選択的かつ可逆的な経口阻害薬であり,円形脱毛症の病因への関与が示唆されるサイトカインシグナル伝達を阻害する可能性がある.
脱毛症重症度ツール(SALT)スコア(範囲:0 [頭髪の脱毛なし]~100 [頭髪の完全脱毛])が 50 以上の重症円形脱毛症の成人を対象として,2 件の無作為化プラセボ対照第 3 相試験(BRAVE-AA1 試験,BRAVE-AA2 試験)を行った.患者を,バリシチニブ 4 mg を 1 日 1 回投与する群,バリシチニブ 2 mg を 1 日 1 回投与する群,プラセボを投与する群に,3:2:2 の割合で無作為に割り付けた.主要転帰は,36 週の時点での SALT スコアが 20 以下であることとした.
BRAVE-AA1 試験には 654 例を,BRAVE-AA2 試験には 546 例を組み入れた.36 週の時点で SALT スコアが 20 以下であった患者の割合は,BRAVE-AA1 試験のバリシチニブ 4 mg 群では 38.8%,バリシチニブ 2 mg 群では 22.8%,プラセボ群では 6.2%と推定され,BRAVE-AA2 試験ではそれぞれ 35.9%,19.4%,3.3%と推定された.BRAVE-AA1 試験では,バリシチニブ 4 mg 群とプラセボ群との差は 32.6 パーセントポイント(95%信頼区間 [CI] 25.6~39.5)であり,バリシチニブ 2 mg 群とプラセボ群との差は 16.6 パーセントポイント(95% CI 9.5~23.8)であった(各用量とプラセボとの比較について P<0.001).BRAVE-AA2 試験では,差はそれぞれ 32.6 パーセントポイント(95% CI 25.6~39.6)と,16.1 パーセントポイント(95% CI 9.1~23.2)であった(各用量とプラセボとの比較について P<0.001).副次的転帰は,バリシチニブ 4 mg 群では大部分がプラセボ群よりも良好であったが,バリシチニブ 2 mg 群では有意差の認められないものが多かった.バリシチニブ群では,痤瘡,クレアチンキナーゼ上昇,低比重リポ蛋白コレステロール上昇,高比重リポ蛋白コレステロール上昇の頻度がプラセボ群よりも高かった.
重症円形脱毛症患者を対象とした 2 件の第 3 相試験で,バリシチニブの経口投与は,36 週の時点における発毛に関して,プラセボ投与よりも優れていた.円形脱毛症に対するバリシチニブの有効性と安全性を評価するには,より長期の試験が必要である.(インサイト社からライセンスを得たイーライリリー社から研究助成を受けた.BRAVE-AA1 試験:ClinicalTrials.gov 登録番号 NCT03570749,BRAVE-AA2 試験:ClinicalTrials.gov 登録番号 NCT03899259)