小児期の心血管危険因子と成人期の心血管イベント
Childhood Cardiovascular Risk Factors and Adult Cardiovascular Events
D.R. Jacobs, Jr., and Others
小児期の心血管危険因子は成人期の潜在性心血管疾患を予測するが,臨床イベントとの関連は明らかにされていない.
国際小児期心血管コホート(i3C)コンソーシアムの参加者を対象とした前向きコホート研究で,小児期(3~19 歳)の危険因子が,平均 35 年間の追跡後の成人期の心血管イベントに関連するかどうかを評価した.体格指数,収縮期血圧,総コレステロール値,トリグリセリド値,若年期の喫煙の 5 つの危険因子について,i3C で得られた年齢別・性別の z スコアと,それらの z スコアの非加重平均として算出した統合リスク z スコアを用いて解析した.代数的に同等の成人期の統合リスク z スコア(心血管イベント発生前)を,小児期の危険因子とともに解析した.研究の転帰は,致死的心血管イベントと致死的・非致死的心血管イベントとし,多重代入後,比例ハザード回帰を用いて解析を行った.
38,589 例(男性 49.7%,黒人 15.0%;小児期受診時の平均 [±SD] 年齢 11.8±3.1 歳)のなかで発生した致死的心血管イベント 319 件の解析では,成人期の致死的心血管イベントのハザード比は,総コレステロール値の z スコア 1 単位増加あたり 1.30(95%信頼区間 [CI] 1.14~1.47),若年期の喫煙で 1.61(95% CI 1.21~2.13)であった(喫煙なしとの比較).統合リスク z スコア 1 単位増加あたりの致死的心血管イベントのハザード比は 2.71(95% CI 2.23~3.29)であった.致死的心血管イベントの解析におけるハザード比と 95%信頼区間は,転帰を評価しえた 20,656 例のなかで発生した致死的・非致死的心血管イベント 779 件の解析結果と同程度であった.成人期の危険因子のデータが得られた 13,401 例(成人期測定時の平均年齢 31.0±5.6 歳)のサブグループで発生した致死的心血管イベント 115 件の解析では,小児期の統合リスク z スコアの 1 単位増加あたりの補正ハザード比は 3.54(95% CI 2.57~4.87)であり,統合リスク z スコアの小児期から成人期の変化量の 1 単位増加あたりの補正ハザード比は 2.88(95% CI 2.06~4.05)であった.致死的・非致死的心血管イベント 524 件の解析でも同様の結果であった.
この前向きコホート研究では,小児期の危険因子と統合リスク z スコアの小児期から成人期の変化量は,中年期の心血管イベントと関連していた.(米国国立衛生研究所から研究助成を受けた.)