小児びまん性橋膠腫に対する腫瘍溶解性ウイルス DNX-2401
Oncolytic DNX-2401 Virus for Pediatric Diffuse Intrinsic Pontine Glioma
J. Gállego Pérez-Larraya and Others
びまん性橋膠腫(DIPG)の患児の予後は不良であり,生存期間の中央値は 1 年未満である.腫瘍溶解性ウイルス療法は,脳のほかの部位の神経膠腫の患児では評価が行われているが,DIPG 患児に対する腫瘍溶解性ウイルス療法に関するデータはない.
新たに DIPG と診断された患児を対象として,腫瘍細胞で選択的に複製する腫瘍溶解性アデノウイルス DNX-2401 の単一施設用量漸増試験を行った.患児に,小脳脚に留置したカテーテルを介してウイルスの単回注入を行い,その後放射線療法を施行した.主要目的は,DNX-2401 の安全性と有害事象プロファイルを評価することであった.副次的目的は,全生存と QOL に対する DNX-2401 の効果を評価すること,客観的奏効割合を明らかにすること,DIPG の分子的特徴と抗腫瘍免疫反応の相関を検討するための腫瘍生検検体と末梢血検体を採取することであった.
新たに DIPG と診断された 3~18 歳の患児 12 例が,DNX-2401 のウイルス粒子 1×1010 個(最初の 4 例)または 5×1010 個(その後の 8 例)の投与を受け,11 例はその後放射線療法を受けた.有害事象として,頭痛,悪心,嘔吐,疲労などが認められた.片麻痺,四肢麻痺がそれぞれ 1 例に発現した.中央値 17.8 ヵ月(範囲 5.9~33.5)の追跡期間中に,MRI で評価した腫瘍サイズの縮小が 9 例で報告され,部分奏効が 3 例,不変(SD)が 8 例で報告された.生存期間の中央値は 17.8 ヵ月であった.本報告の作成時点で 2 例が生存しており,うち 1 例では 38 ヵ月の時点で腫瘍の進展を認めなかった.1 例の剖検時に採取した腫瘍検体の検査,および末梢血検査で,腫瘍微小環境と T 細胞レパートリーの変化が確認された.
DIPG の患児に対する腫瘍溶解性ウイルス DNX-2401 の腫瘍内注入とそれに続く放射線療法の結果,患児の一部では T 細胞活性が変化し, 腫瘍サイズの縮小または安定が得られたが,有害事象を伴った.(欧州連合ホライズン 2020 研究・イノベーションプログラム 欧州研究会議ほかから研究助成を受けた.EudraCT 登録番号 2016-001577-33,ClinicalTrials.gov 登録番号NCT03178032)