January 27, 2022 Vol. 386 No. 4
関節リウマチに対するトファシチニブに伴う心血管リスクと癌リスク
Cardiovascular and Cancer Risk with Tofacitinib in Rheumatoid Arthritis
S.R. Ytterberg and Others
トファシチニブによる脂質の上昇と癌の増加が認められたことから,トファシチニブの投与を受けている関節リウマチ患者における主要有害心血管イベント(MACE)と癌について,腫瘍壊死因子(TNF)阻害薬と比較検討する試験を行った.
メトトレキサートの投与にもかかわらず活動性の関節リウマチを有する,年齢が 50 歳以上で,ほかの心血管危険因子を 1 つ以上有する患者を対象として,無作為化非盲検非劣性承認後安全性エンドポイント試験を行った.患者を,トファシチニブ 5 mg を 1 日 2 回投与する群,10 mg を 1 日 2 回投与する群,TNF 阻害薬を投与する群に 1:1:1 の割合で無作為に割り付けた.複合主要エンドポイントは,中央判定に基づく MACE と癌とし,悪性黒色腫以外の皮膚癌は除いた.2 つの用量群を合わせたトファシチニブの,TNF 阻害薬に対するハザード比の両側 95%信頼区間の上限が 1.8 未満の場合に,トファシチニブの非劣性が示されることとした.
1,455 例がトファシチニブ 5 mg の 1 日 2 回投与,1,456 例がトファシチニブ 10 mg の 1 日 2 回投与,1,451 例が TNF 阻害薬の投与を受けた.中央値 4.0 年の追跡期間中,MACE の発生率と癌の発生率は,トファシチニブ統合群(それぞれ 3.4% [98 例] と 4.2%[122 例])が TNF 阻害薬群(2.5% [37 例] と 2.9% [42 例])よりも高かった.MACE のハザード比は 1.33(95%信頼区間 [CI] 0.91~1.94),癌のハザード比は 1.48(95% CI 1.04~2.09)であり,トファシチニブの非劣性は示されなかった.中央判定に基づく日和見感染症(帯状疱疹と結核を含む),すべての帯状疱疹(非重篤と重篤),中央判定に基づく悪性黒色腫以外の皮膚癌の発生率は,トファシチニブ群のほうが TNF 阻害薬よりも高かった.有効性は 3 群で同程度であり,2 ヵ月目以降に認められた改善は試験終了まで持続した.
心血管リスクの高い集団を対象として,2 つの用量のトファシチニブと TNF 阻害薬とを比較した試験で,MACE のリスクと癌のリスクはトファシチニブのほうが高く,非劣性基準を満たさなかった.複数の有害事象がトファシチニブ群でより多く発現した.(ファイザー社から研究助成を受けた.ORAL Surveillance 試験:ClinicalTrials.gov 登録番号 NCT02092467)