September 22, 2022 Vol. 387 No. 12
2 型糖尿病に対する血糖降下薬 ― 微小血管転帰と心血管転帰
Glycemia Reduction in Type 2 Diabetes — Microvascular and Cardiovascular Outcomes
The GRADE Study Research Group
2 型糖尿病患者に対しメトホルミンに加えてよく使用される血糖降下薬を投与した場合の,微小血管転帰と心血管疾患転帰に対する相対的有効性に関するデータは不足している.
2 型糖尿病患者を対象として,メトホルミンに加えてよく使用される 4 種類の血糖降下薬のいずれかを投与した場合の,糖化ヘモグロビン値 7.0%未満の達成と維持における相対的有効性を評価した.参加者を,インスリングラルギン U-100(以下,グラルギン)群,グリメピリド群,リラグルチド群,シタグリプチン群に無作為に割り付けた.事前に規定した,微小血管疾患と心血管疾患に関する副次的転帰は,高血圧・脂質異常症,尿中アルブミンの中等度または高度の上昇が確認されるまたは推算糸球体濾過量 60 mL/分/1.73 m2 体表面積未満,ミシガン糖尿病性神経障害スクリーニング法(MNSI)で評価した糖尿病性末梢神経障害,心血管イベント(主要有害心血管イベント [MACE],心不全による入院,あらゆる心血管疾患),死亡などとした.ハザード比を,多重比較の補正をしていない 95%信頼限界とともに示す.
5,047 例が組み入れられ,平均 5.0 年の追跡期間中に,高血圧・脂質異常症の発生,および微小血管転帰に関しては,群間に大きな差はなく,全体的な発生率(すなわち 100 人年あたりのイベント数)の平均は,尿中アルブミンの中等度の上昇が 2.6,尿中アルブミンの高度の上昇が 1.1,腎障害が 2.9,糖尿病性末梢神経障害が 16.7 であった.MACE(全体的な発生率 1.0),心不全による入院(0.4),心血管系の原因による死亡(0.3),全死亡(0.6)に関しては,群間で差はなかった.あらゆる心血管疾患の発生率は,グラルギン群で 1.9,グリメピリド群で 1.9,リラグルチド群で 1.4,シタグリプチン群で 2.0 であり,わずかな差が認められた.1 つの治療を,その他 3 つの治療を統合した結果と比較した場合,あらゆる心血管疾患のハザード比は,グラルギン群 1.1(95%信頼区間 [CI] 0.9~1.3),グリメピリド群 1.1(95% CI 0.9~1.4),リラグルチド群 0.7(95% CI 0.6~0.9),シタグリプチン群 1.2(95% CI 1.0~1.5)であった.
2 型糖尿病患者において,微小血管合併症と死亡の発生率には 4 種類の薬剤で大きな差はなかったが,あらゆる心血管疾患の発生率には群間差がある可能性が示された.(米国国立糖尿病・消化器病・腎臓病研究所ほかから研究助成を受けた.GRADE 試験:ClinicalTrials.gov 登録番号 NCT01794143)