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September 22, 2022 Vol. 387 No. 12

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SOD1 変異による筋萎縮性側索硬化症に対するアンチセンスオリゴヌクレオチド製剤トフェルセンの試験
Trial of Antisense Oligonucleotide Tofersen for SOD1 ALS

T.M. Miller and Others

背景

アンチセンスオリゴヌクレオチド製剤トフェルセン(tofersen)の髄腔内投与は,スーパーオキシドジスムターゼ 1(SOD1)蛋白の合成を抑制することから,SOD1 の変異を伴う筋萎縮性側索硬化症(SOD1 ALS)患者で検討が行われている.

方 法

第 3 相試験で,SOD1 ALS の成人を,24 週の期間にトフェルセン(100 mg)を 8 回投与する群と,プラセボを投与する群に 2:1 の割合で無作為に割り付けた.主要エンドポイントは,疾患の進行が早いと予測された参加者における,ALS 機能評価スケール改訂版(ALSFRS-R;スコアは 0~48 で,高いほど機能が良好であることを示す)の合計スコアのベースラインから 28 週目までの変化量とした.副次的エンドポイントは,脳脊髄液(CSF)中 SOD1 蛋白総濃度の変化,血漿中ニューロフィラメント軽鎖濃度の変化,肺活量(SVC)の変化,16 の筋肉の徒手筋力計による測定結果の変化などとした.52 週の時点で試験の無作為化期と非盲検延長期の統合解析を行い,試験参加時にトフェルセンを開始した参加者(早期開始コホート)の結果と,28 週目にプラセボからトフェルセンに切り替えた参加者(遅延開始コホート)の結果とを比較した.

結 果

72 例(進行が早いと予測された参加者は 39 例)がトフェルセンの投与を受け,36 例(進行が早いと予測された参加者は 21 例)がプラセボの投与を受けた.CSF 中 SOD1 濃度と血漿中ニューロフィラメント軽鎖濃度は,トフェルセンによってプラセボよりも大きく減少した.進行が早いと予測されたサブグループにおける ALSFRS-R スコアの 28 週目までの変化量(主要解析)は,トフェルセン群で -6.98,プラセボ群で -8.14 であった(差 1.2 ポイント,95%信頼区間 [CI] -3.2~5.5,P=0.97).副次的臨床エンドポイントの結果には,2 群間で有意差は認められなかった.計 95 例(88%)が非盲検延長期に移行した.52 週の時点で,ALSFRS-R スコアの変化量は,早期開始コホートでは -6.0,遅延開始コホートでは -9.5 であった(差 3.5 ポイント,95% CI 0.4~6.7).その他のエンドポイントについては,多重性の補正を行っていない解析では,トフェルセンの早期開始を支持する差が認められた.腰椎穿刺に関連する有害事象の頻度が高かった.重篤な神経学的有害事象がトフェルセンの投与を受けた患者の 7%に発現した.

結 論

SOD1 ALS 患者では,トフェルセンは,28 週間にわたり CSF 中 SOD1 濃度と血漿中ニューロフィラメント軽鎖濃度を減少させたが,臨床エンドポイントは改善せず,有害事象と関連した.トフェルセンの早期開始の,遅延開始と比較した効果の可能性については,延長期で評価が進められている.(バイオジェン社から研究助成を受けた.VALOR 試験:ClinicalTrials.gov 登録番号 NCT02623699,EudraCT 登録番号 2015-004098-33;VALOR OLE 試験:ClinicalTrials.gov 登録番号 NCT03070119,EudraCT 登録番号 2016-003225-41)

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2022; 387 : 1099 - 110. )