November 24, 2022 Vol. 387 No. 21
学校における全員マスク着用義務を解除する ― 児童生徒および職員における Covid-19 の発生率
Lifting Universal Masking in Schools — Covid-19 Incidence among Students and Staff
T.L. Cowger and Others
2022 年 2 月,マサチューセッツ州は州全体の公立学校における全員マスク着用方針を廃止し,州内の多くの学区は,その後数週のあいだにマスク着用義務を解除した.ボストン大都市圏では,ボストン地区と,隣接するチェルシー地区の 2 つの学区のみが,2022 年 6 月までマスク着用義務を継続した.マスク着用義務の解除の時期がずれたことで,全員マスク着用方針が,学校における新型コロナウイルス感染症(Covid-19)の発生率に及ぼす影響を検討する機会が得られた.
方針実施時期のずれに対して差分の差分法を用いて,ボストン大都市圏内でマスク着用義務を解除した学区の児童生徒および職員における Covid-19 の発生率を,マスク着用義務を 2021~22 年の学年度中継続した学区の発生率と比較した.学区の特性も比較した.
州全体のマスク着用方針の廃止前は,Covid-19 の発生率の傾向は学区全体で同様であった.州全体のマスク着用方針廃止後 15 週のあいだに,マスク着用義務の解除は,児童生徒および職員 1,000 人あたり 44.9 例(95%信頼区間 32.6~57.1)の Covid-19 症例の追加と関連し,この推定値は,同期間の学区全体における 11,901 症例の追加,全症例の 29.4%に相当した.マスク着用義務をより長く継続することを選択した学区では,マスク着用義務をより早期に解除することを選択した学区に比べて,校舎が古く,校舎の設備環境が不良で,教室あたりの生徒数が多い傾向があった.さらにこれらの学区では,低所得層の児童生徒,障害のある児童生徒,英語学習者である児童生徒の割合が高く,黒人およびラテン系の児童生徒ならびに職員の割合も高かった.これらの結果は,全員マスク着用を,学校における Covid-19 の発生率を減少させ,対面での学校生活の喪失を防ぐ重要な戦略として支持している.そこからわれわれは,全員マスク着用は,学校における構造的人種差別の影響,たとえば教育格差の深刻化の可能性を軽減させるのにとくに有用であると考える.
ボストン大都市圏の学区におけるマスク着用義務の解除は,州全体のマスク着用方針廃止後 15 週のあいだに,児童生徒および職員 1,000 人あたり 44.9 例の Covid-19 症例の追加と関連した.