The NEW ENGLAND JOURNAL of MEDICINE

日本国内版

年間購読お申込み

日本語アブストラクト

August 4, 2022 Vol. 387 No. 5

Share

Share on Facebook
Facebookで共有する
Share on Twitter
Twitterでつぶやく
Share on Note
noteに投稿する

RSS

RSS

マラリア予防のための低用量モノクローナル抗体の皮下投与と静脈内投与との比較
Low-Dose Subcutaneous or Intravenous Monoclonal Antibody to Prevent Malaria

R.L. Wu and Others

背景

マラリアは,世界的に乳幼児の疾病と死亡の主要な原因であり,その予防と根絶に新たなアプローチが必要とされている.

方 法

マラリア感染歴もマラリアワクチン接種歴もない健康な成人を対象とした第 1 相臨床試験で,次世代の抗マラリアモノクローナル抗体 L9LS の安全性と薬物動態を評価し,コントロール下でのヒトマラリア感染(CHMI)に対する防御効果を検討した.参加者に,L9LS を 1 mg/kg 体重,5 mg/kg,20 mg/kg のいずれかの用量で静脈内投与するか,5 mg/kg を皮下投与した.L9LS の投与後 2~6 週以内に,L9LS を投与した参加者と対照群の参加者の両方に CHMI を行った.CHMI では, 参加者を熱帯熱マラリア原虫(Plasmodium falciparum,3D7 株)を保有する蚊に曝露させた.

結 果

安全性の懸念は認められなかった.L9LS の推定半減期は 56 日で,用量直線性が認められ,最高血清中濃度(Cmax)の平均(±SD)は,20 mg/kg の静脈内投与を受けた参加者でもっとも高く 914.2±146.5 μg/mL,1 mg/kg の静脈内投与を受けた参加者でもっとも低く 41.5±4.7 μg/mL であり,5 mg/kg の静脈内投与を受けた参加者では 164.8±31.1 μg/mL,5 mg/kg の皮下投与を受けた参加者では 68.9±22.3 μg/mL であった.L9LS の投与を受けた 17 例と対照 6 例に CHMI を行った.L9LS の単回投与を受けた 17 例中 15 例(88%)がマラリアから防御された.寄生虫血症は,L9LS 5 mg/kg の静脈投与を受けた参加者と 20 mg/kg の静脈内投与を受けた参加者には認められず,1 mg/kg の静脈内投与を受けた 5 例中 1 例,5 mg/kg の皮下投与を受けた 5 例中 1 例,対照群では 6 例全例で,CHMI 後 21 日目までに認められた.L9LS による防御効果は,血清中濃度が 9.2 μg/mL という低値でも認められた.

結 論

今回の小規模試験では,L9LS の静脈内投与または皮下投与を受けた参加者は,CHMI ではマラリアから防御され,明らかな安全性の懸念は認められなかった.(米国国立アレルギー・感染症研究所から研究助成を受けた.VRC 614 試験:ClinicalTrials.gov 登録番号 NCT05019729)

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2022; 387 : 397 - 407. )