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July 7, 2022 Vol. 387 No. 1

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治療歴のある HER2 低発現進行乳癌に対するトラスツズマブ デルクステカン
Trastuzumab Deruxtecan in Previously Treated HER2-Low Advanced Breast Cancer

S. Modi and Others

背景

ヒト上皮増殖因子受容体 2(HER2)の増幅,過剰発現,またはその両方を認めない乳癌の大部分は,標的となりうる HER2 の発現が低い.このような「HER2 低発現」の乳癌患者には,現在利用可能な HER2 標的療法は効果がないことが示されている.

方 法

1~2 レジメンの化学療法歴のある HER2 低発現転移性乳癌患者を対象として,第 3 相試験を行った.(HER2 低発現は,免疫組織化学的解析スコア [IHC スコア] 1+,または IHC スコア 2+かつ in situ ハイブリダイゼーション陰性と定義した.) 患者を,トラスツズマブ デルクステカンを投与する群と,医師が選択した化学療法を行う群に 2:1 の割合で無作為に割り付けた.主要エンドポイントは,ホルモン受容体陽性コホートにおける無増悪生存とした.主な副次的エンドポイントは,すべての患者における無増悪生存と,ホルモン受容体陽性コホートおよびすべての患者における全生存とした.

結 果

無作為化された 557 例のうち,494 例(88.7%)がホルモン受容体陽性乳癌,63 例(11.3%)がホルモン受容体陰性乳癌であった.ホルモン受容体陽性コホートでは,無増悪生存期間の中央値はトラスツズマブ デルクステカン群で 10.1 ヵ月,医師選択化学療法群で 5.4 ヵ月であり(病勢進行または死亡のハザード比 0.51,P<0.001),全生存期間はそれぞれ 23.9 ヵ月,17.5 ヵ月であった(死亡のハザード比 0.64,P=0.003).すべての患者では,無増悪生存期間の中央値はトラスツズマブ デルクステカン群で 9.9 ヵ月,医師選択化学療法群で 5.1 ヵ月であり(病勢進行または死亡のハザード比 0.50,P<0.001),全生存期間はそれぞれ 23.4 ヵ月,16.8 ヵ月であった(死亡のハザード比 0.64,P=0.001).グレード 3 以上の有害事象の発現率は,トラスツズマブ デルクステカンの投与を受けた患者で 52.6%,医師選択化学療法を受けた患者で 67.4%であった.薬剤関連と判定された間質性肺疾患または肺炎は,トラスツズマブ デルクステカンの投与を受けた患者の 12.1%に発現し,0.8%ではグレード 5 の事象が発現した.

結 論

HER2 低発現転移性乳癌患者を対象としたこの試験で,トラスツズマブ デルクステカンの投与を受けた患者では,医師選択化学療法を受けた患者と比較して,無増悪生存期間と全生存期間が有意に延長した.(第一三共社,アストラゼネカ社から研究助成を受けた.DESTINY-Breast04 試験:ClinicalTrials.gov 登録番号 NCT03734029)

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2022; 387 : 9 - 20. )