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January 4, 2024 Vol. 390 No. 1

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料理に液化石油ガスを使用した場合とバイオマス燃料を使用した場合とによる乳児の成長阻害への影響の比較
Effects of Cooking with Liquefied Petroleum Gas or Biomass on Stunting in Infants

W. Checkley and Others

背景

家庭内空気汚染は幼児の成長阻害と関連している.料理に使用するバイオマス燃料(木質,糞,農業残渣など)を液化石油ガス(LPG)に替えることで,成長阻害のリスクを低減させられるかどうかは明らかにされていない.

方 法

低中所得国 4 ヵ国の,18~34 歳の妊娠女性 3,200 人を対象として無作為化試験を行った.妊娠 9 週~20 週未満の女性を,18 ヵ月間,無料の LPG 料理用レンジを使用し,無料の燃料が継続的に届けられる群(介入群)と,バイオマス燃料料理用レンジの使用を継続する群(対照群)に無作為に割り付けた.出生した児の身長を生後 12 ヵ月時に測定した.微小粒子状物質(空気力学径 2.5 μm 以下の粒子)への個人曝露量の観察を妊娠時から開始し,児が 1 歳になるまで継続した.4 つの主要転帰のうち,本稿でデータを示す主要転帰は,生後 12 ヵ月時の成長阻害(年齢別身長 z スコアが,成長基準値の中央値より -2 標準偏差超と定義)である.intention-to-treat 解析を行い,成長阻害の相対リスクを推定した.

結 果

介入遵守率は高く,介入によって,出生前・出生後の微小粒子状物質への 24 時間個人曝露量は対照よりも低くなった(出生前の曝露量の平均 35.0 μg/m3 対 103.3 μg/m3,出生後の曝露量の平均 37.9 μg/m3 対 109.2 μg/m3).出生した児 3,061 人のうち,生後 12 ヵ月時に有効な身長測定値が得られたのは,介入群の女性から生まれた 1,536 人中 1,171 人(76.2%)と,対照群の女性から生まれた 1,525 人中 1,186 人(77.8%)であった.成長阻害は,介入群の女性から生まれ解析対象となった 1,171 人中 321 人(27.4%)に発生し,対照群の女性から生まれ解析対象となった 1,186 人中 299 人(25.2%)に発生した(相対リスク 1.10,98.75%信頼区間 0.94~1.29,P=0.12).

結 論

妊娠時に開始し,料理に使用するバイオマス燃料を LPG に替えることで家庭内空気汚染の低減をめざす介入戦略は,乳児の成長阻害リスクを低減しなかった(米国国立衛生研究所,ビル&メリンダ・ゲイツ財団から研究助成を受けた.HAPIN 試験:ClinicalTrials.gov 登録番号 NCT02944682)

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2024; 390 : 44 - 54. )