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February 22, 2024 Vol. 390 No. 8

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自己免疫疾患に対する CD19 CAR-T 細胞療法 ― 追跡を伴うケースシリーズ
CD19 CAR T-Cell Therapy in Autoimmune Disease — A Case Series with Follow-up

F. Müller and Others

背景

全身性エリテマトーデス(SLE),特発性炎症性筋疾患,全身性強皮症などの自己免疫疾患の治療では,免疫抑制薬の長期投与が行われることが多い.これらの患者の自己免疫異常を,B 細胞を強力に除去することでリセットすることが,薬剤を中止しても寛解が維持される「ドラッグフリー寛解」を達成するための戦略となる可能性がある.

方 法

フルダラビンとシクロホスファミドによる前処置後に CD19 キメラ抗原受容体 T(CAR-T)細胞の単回注入を受けた,いずれも重症の SLE(8 例),特発性炎症性筋疾患(3 例),全身性強皮症(4 例)の計 15 例の患者を評価した.CAR-T 細胞注入後最長 2 年間の有効性を,SLE 寛解の定義(DORIS)の寛解基準,米国リウマチ学会・欧州リウマチ学会(ACR–EULAR)の臨床的改善基準,欧州強皮症臨床試験・研究グループ(EUSTAR)の活動性指標スコア(数値が高いほど疾患活動性が高いことを示す)などを用いて評価した.サイトカイン放出症候群,感染などの安全性評価項目を記録した.

結 果

追跡期間の中央値は 15 ヵ月(範囲 4~29)であった.B 細胞無形成の持続期間の平均(±SD)は 112±47 日であった.SLE 患者全例が DORIS 寛解を達成し,特発性炎症性筋疾患患者全例に ACR–EULAR 基準で高度の臨床的改善が認められ,全身性強皮症患者全例で EUSTAR の活動性指標スコアが低下した.免疫抑制療法は全例で完全に中止された.グレード 1 のサイトカイン放出症候群が 10 例に発現した.グレード 2 のサイトカイン放出症候群,グレード 1 の免疫エフェクター細胞関連神経毒性症候群,入院にいたった肺炎が各 1 例に発現した.

結 論

今回のケースシリーズで,CD19 CAR-T 細胞の投与は,3 つの自己免疫疾患に対して実行可能,安全,有効であると考えられ,さらなる比較臨床試験を行う理論的根拠が示された.(ドイツ研究振興協会ほかから研究助成を受けた.)

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2024; 390 : 687 - 700. )