Covid-19 に対する曝露後予防としての経口ニルマトレルビル/リトナビル
Oral Nirmatrelvir–Ritonavir as Postexposure Prophylaxis for Covid-19
J. Hammond and Others
新型コロナウイルス感染症(Covid-19)治療薬の臨床試験では,曝露後予防の有意な利益は示されていない.
無作為化前 96 時間に家庭内で Covid-19 患者に曝露していた,無症状の,迅速抗原検査陰性の成人を対象として,ニルマトレルビル/リトナビルの有効性と安全性を評価する第 2・3 相二重盲検試験を行った.参加者を,ニルマトレルビル/リトナビル(ニルマトレルビル 300 mg,リトナビル 100 mg)を 12 時間ごとに 5 日間投与する群,10 日間投与する群,マッチさせたプラセボを 10 日間投与する群に 1:1:1 の割合で無作為に割り付けた.主要エンドポイントは,ベースライン時の逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)検査で陰性であった参加者に,症状を伴う重症急性呼吸器症候群コロナウイルス 2(SARS-CoV-2)感染が 14 日目までに発生することとし,感染は RT-PCR 検査または迅速抗原検査で確認した.
2,736 例が試験群に無作為に割り付けられた.内訳はニルマトレルビル/リトナビル 5 日間群 921 例,ニルマトレルビル/リトナビル 10 日間群 917 例,プラセボ群 898 例であった.14 日目までに,症状を伴う SARS-CoV-2 感染は,ニルマトレルビル/リトナビル 5 日間群の 2.6%,ニルマトレルビル/リトナビル 10 日間群の 2.4%,プラセボ群の 3.9%に発生した.症状を伴う SARS-CoV-2 感染が発生した参加者の割合に,ニルマトレルビル/リトナビルの各群とプラセボ群とのあいだに有意差は認められず,プラセボと比較したリスク減少は,ニルマトレルビル/リトナビル 5 日間群で 29.8%(95%信頼区間 [CI] -16.7~57.8,P=0.17),ニルマトレルビル/リトナビル 10 日間群で 35.5%(95% CI -11.5~62.7,P=0.12)であった.有害事象の発現率は 3 群で同程度であり,もっとも多く報告された有害事象は味覚障害であった(ニルマトレルビル/リトナビル 5 日間群 5.9%,ニルマトレルビル/リトナビル 10 日間群 6.8%,プラセボ群 0.7%).
このプラセボ対照試験では,5 日間または 10 日間のニルマトレルビル/リトナビルによる曝露後予防は,症状を伴う SARS-CoV-2 感染のリスクを有意に減少させなかった.(ファイザー社から研究助成を受けた.ClinicalTrials.gov 登録番号 NCT05047601)