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September 5, 2024 Vol. 391 No. 9

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ヒトの熱性疾患に関連する新規のオルソナイロウイルス
A New Orthonairovirus Associated with Human Febrile Illness

X.-A. Zhang and Others

背景

2019 年 6 月,内モンゴルの湿地公園でダニに刺咬されたあとに発熱が続いた男性が受診し,その後多臓器機能不全をきたした.次世代シーケンシングを行ったところ,これまで知られていなかったオルソナイロウイルスへの感染が明らかになり,われわれはこれを Wetland ウイルス(WELV)と名付けた.

方 法

ダニ刺咬歴のある発熱患者における WELV 感染の有病率を明らかにするため,病院ベースの積極的サーベイランスを実施した.疫学調査も行った.ウイルスを分離し,動物モデルにおいて感染力と病原性を調べた.

結 果

WELV は,ナイロウイルス科のオルソナイロウイルス属に属し,ダニ媒介性の Hazara オルソナイロウイルス遺伝子群ともっとも近い関係にある.逆転写酵素 PCR 法により,中国の内モンゴル,黒竜江,吉林,遼寧の患者 17 例で急性 WELV 感染が同定された.これらの患者の主訴は,発熱,浮動性めまい,頭痛,倦怠感,筋肉痛,関節痛,背部痛などの非特異的症状であり,より頻度は低いが点状出血と局所リンパ節腫脹も認められた.1 例には神経症状があった.頻度の高い臨床検査所見は,白血球減少,血小板減少,D ダイマー高値,乳酸脱水素酵素高値であった.8 例から得られた回復期検体の血清学的評価では,WELV 特異的抗体価が急性期検体の 4 倍であった.中国北東部で採取したダニ 5 種と,ヒツジ,ウマ,ブタ,ヒガシモグラネズミ(Myospalax psilurus)の検体から,WELV RNA が検出された.発端患者とダニから分離されたウイルスは,ヒト臍帯静脈内皮細胞において細胞変性効果を示した.BALB/c マウス,C57BL/6 マウス,昆明マウスでは,ウイルスを腹腔内に注入すると致死的感染を起こした.Haemaphysalis concinna ダニが,卵巣から WELV を伝播させられるベクターの可能性がある.

結 論

新規のオルソナイロウイルスが同定され,中国北東部におけるヒトの熱性疾患と関連していることが示された.(中国国家自然科学基金,中国医学科学院 医科学イノベーション基金から研究助成を受けた.)

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2024; 391 : 821 - 31. )