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April 24, 2025 Vol. 392 No. 16

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異染性白質ジストロフィーに対するアチダルサジーン オートテムセルの長期効果
Long-Term Effects of Atidarsagene Autotemcel for Metachromatic Leukodystrophy

F. Fumagalli and Others

背景

異染性白質ジストロフィー(MLD)は,アリルスルファターゼ A(ARSA)の欠損により引き起こされる,きわめてまれな重症リソソーム蓄積症である.

方 法

MLD 患者を対象とした 2 件の前向き非盲検臨床試験,および拡大アクセスプログラムで,造血幹細胞ベースの遺伝子治療であるアチダルサジーン オートテムセル(atidarsagene autotemcel;arsa-cel)による治療を行った.患者の転帰を,未治療患者(自然経過コホート)と比較した.主要評価項目は,重度運動障害のない生存(出生から,歩行能力の喪失・座位保持能力の喪失の初回発生または全死因死亡までの期間)とした.

結 果

治療を受けた 39 例と未治療の 49 例を対象とした.追跡期間の中央値は 6.76 年(範囲 0.64~12.19)であった.arsa-cel により,未治療と比較して,重度運動障害または死亡のリスクは,発症前の後期乳児型 MLD 患者(P<0.001),発症前の早期若年型 MLD 患者(P=0.04),初期の症状を伴う早期若年型 MLD 患者(P<0.001)において,有意に低下した.6 歳の時点で重度運動障害なく生存していた患者の推定割合は,未治療の後期乳児型 MLD 患者で 0%(95%信頼区間 [CI] 評価不能),治療を受けた発症前の後期乳児型 MLD 患者で 100%(95% CI 100~100)であった.10 歳の時点で重度運動障害なく生存していた患者の推定割合は,未治療の早期若年型 MLD 患者で 11.2%(95% CI 0.9~36.4),治療を受けた発症前の早期若年型 MLD 患者で 87.5%(95% CI 38.7~98.1),治療を受けた初期の症状を伴う早期若年型 MLD 患者で 80.0%(95% CI 40.9~94.6)であった.遺伝子挿入による腫瘍発生の所見は認められなかった.もっとも頻度の高かったグレード 3 以上の有害事象は,発熱性好中球減少症であった.arsa-cel で治療した 39 例中 6 例(15%)で抗 ARSA 抗体が一過性に検出された.3 例が死亡したが,いずれも arsa-cel には関連しないと試験担当医師に判定された.

結 論

発症前の後期乳児型 MLD,発症前の早期若年型 MLD,初期の症状を伴う早期若年型 MLD の患者のうち,arsa-cel による治療を受けた患者は,治療を受けなかった自然歴コホートよりも,重度運動障害または死亡のリスクが有意に低かった.(オーチャード セラピューティクス社ほかから研究助成を受けた.ClinicalTrials.gov 登録番号 NCT01560182,NCT03392987)

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2025; 392 : 1609 - 20. )