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September 18, 2025 Vol. 393 No. 11

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PI3K 変異を有する限局性大腸癌に対する低用量アスピリン
Low-Dose Aspirin for PI3K-Altered Localized Colorectal Cancer

A. Martling and Others

背景

アスピリンは,高リスク者における大腸腺腫と大腸癌の発生率を減少させる.観察研究からは,診断後の無病生存を改善させる可能性もあることが,とくに PIK3CA の体細胞変異を有する腫瘍患者において示唆されている.しかし,無作為化試験のデータはない.

方 法

PI3K 経路の遺伝子に体細胞変異を有する,ステージ I,II,III いずれかの直腸癌患者と,ステージ II または III の結腸癌患者を対象に,二重盲検無作為化プラセボ対照試験を行った.患者を,アスピリン 160 mg を 1 日 1 回,3 年間投与する群と,マッチさせたプラセボを投与する群に 1:1 の割合で割り付けた.PIK3CA のエクソン 9 または 20 に事前に規定したホットスポット変異(グループ A 変異)を有する患者と,それ以外の中等度~高度の影響度の体細胞変異(グループ B 変異)を PIK3CAPIK3R1PTEN のいずれかに有する患者を,無作為化に適格とした.主要評価項目はグループ A 変異患者における大腸癌の再発とし,生存時間(time-to-event)解析で評価した.副次的評価項目は,無病生存,安全性,グループ B 変異患者における大腸癌の再発などとした.

結 果

PI3K 経路の遺伝子変異は,完全なゲノムデータが得られた 2,980 例中 1,103 例(37.0%)で検出された.内訳はグループ A 変異が 515 例,グループ B 変異が 588 例で,それぞれ 314 例と 312 例がアスピリン群とプラセボ群に割り付けられた.3 年累積再発率の推定値は,グループ A 変異患者のアスピリン群で 7.7%,プラセボ群で 14.1%であり(ハザード比 0.49,95%信頼区間 [CI] 0.24~0.98,P=0.04),グループ B 変異患者ではそれぞれ 7.7%,16.8%であった(ハザード比 0.42,95% CI 0.21~0.83).3 年無病生存率の推定値は,グループ A 変異患者のアスピリン群で 88.5%,プラセボ群で 81.4%であり(ハザード比 0.61,95% CI 0.34~1.08),グループ B 変異患者ではそれぞれ 89.1%,78.7%(ハザード比 0.51,95% CI 0.29~0.88)であった.重度の有害事象は,アスピリンの投与を受けた患者の 16.8%とプラセボの投与を受けた患者の 11.6%に発現した.

結 論

PIK3CA のエクソン 9 また 20 にホットスポット変異を有する大腸癌患者では,アスピリンにより,プラセボと比較して,再発率が有意に低くなり,PI3K 経路の遺伝子にその他の体細胞変異を有する患者にも,同様の利益をもたらすと思われた.(スウェーデン研究評議会ほかから研究助成を受けた.ALASCCA 試験:ClinicalTrials.gov 登録番号 NCT02647099,EudraCT 登録番号 2015-004240-19)

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2025; 393 : 1051 - 64. )