胃腸炎の小児に対する救急部受診後のオンダンセトロンの複数回投与
Multidose Ondansetron after Emergency Visits in Children with Gastroenteritis
S.B. Freedman and Others
急性胃腸炎に伴う嘔吐を呈する小児は,救急部でオンダンセトロンが投与されると転帰が改善する.オンダンセトロンは,症状を軽減する目的で退院時に処方されることが一般的となったが,この診療を支持するエビデンスは限られている.
6 ヵ所の小児救急部で,急性胃腸炎に伴う嘔吐を呈する生後 6 ヵ月~18 歳未満の小児を対象に,二重盲検無作為化優越性試験を行った.登録後 48 時間に,嘔吐が持続する場合に投与するための,6 回分の経口オンダンセトロンまたはプラセボを介護者に提供した.主要転帰は登録後 7 日間の中等症~重症の胃腸炎とし,修正 Vesikari スケールスコア(0~20 で,値が高いほど重症であることを示す)が 9 以上と定義した.副次的転帰は,嘔吐の存在,嘔吐の持続時間(登録から最後の嘔吐エピソードまでの時間と定義),登録後 48 時間以内の嘔吐エピソードの回数,登録後 7 日以内の予定外受診,静脈内輸液の実施などとした.
1,030 例が無作為化された.中等症~重症の胃腸炎が認められた割合は,オンダンセトロン群では 5.1%(データが得られた 452 例中 23 例),プラセボ群では 12.5%(441 例中 55 例)であった(未補正リスク差 -7.4 パーセントポイント,95%信頼区間 [CI] -11.2~-3.7).施設,体重,欠測データで補正後,オンダンセトロンは,中等症~重症の胃腸炎のリスクがプラセボよりも低いことと関連した(補正オッズ比 0.50,95% CI 0.40~0.60).嘔吐の存在と嘔吐の持続時間の中央値には,群間で意味のある差を認めなかったが,登録後 48 時間以内の嘔吐エピソードの総数は,オンダンセトロン群のほうがプラセボ群よりも少なかった(補正率比 0.76,95% CI 0.67~0.87).登録後に予定外受診をした児の割合と,静脈内輸液を受けた児の割合に,群間で大きな差はなかった.有害事象の発現率にも,群間で意味のある差は認められなかった(オッズ比 0.99,95% CI 0.61~1.61).
胃腸炎に伴う嘔吐を呈する小児において,救急部受診後にオンダンセトロンを提供した場合,プラセボを提供した場合と比較して,その後 7 日間の中等症~重症の胃腸炎のリスクが低かった.(カナダ健康研究所ほかから研究助成を受けた.ClinicalTrials.gov 登録番号 NCT03851835)