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September 11, 2025 Vol. 393 No. 10

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郡刑務所におけるオピオイド使用障害治療薬 ― 釈放後の転帰
Medications for Opioid Use Disorder in County Jails — Outcomes after Release

P.D. Friedmann and Others

背景

2019 年,マサチューセッツ州の 7 つの郡矯正施設(刑務所)は,パイロットプログラムの一環として,米国食品医薬品局が承認したすべてのオピオイド使用障害治療薬(MOUD)の提供を開始した.

方 法

リンクさせた州のデータを用いて,刑務所入所中にオピオイド使用障害(OUD)がほぼ確実とされ,2019 年 9 月 1 日~2020 年 12 月 31 日にこのプログラムから MOUD を受け取った人と受け取らなかった人の,釈放後の MOUD の受取り,過量服用,死亡,再入所を調査する観察研究を行った.対数二項モデルおよび比例ハザードモデルは,傾向スコア加重で補正し,さらに傾向スコア加重後も不均衡のままであったベースラインの共変量を補正した.

結 果

研究コホートには OUD がほぼ確実とされた 6,400 人が含まれた.2,711 人(42.4%)は刑務所で MOUD を受け取り,3,689 人(57.6%)は受け取らなかった.刑務所で MOUD による治療を受けた人のうち,67.9%はブプレノルフィン,25.7%はメサドン,6.5%はナルトレキソン(naltrexone)を使用した.治療を受けた人は,受けなかった人よりも,白人である可能性が高く(75.4% 対 58.1%),有罪判決を受ける可能性が高く(31.6% 対 13.2%),入所時にすでに MOUD を受け取っている可能性が高く(73.7% 対 17.1%),地域社会に釈放後の 30 日間に MOUD を受け取る可能性が高かった(60.2% 対 17.6%,補正後の相対リスク 1.44,95%信頼区間 [CI] 1.38~1.50).MOUD を受け取っていた人で,釈放後 90 日間の 75%以上で MOUD による治療に取り組んでいたのは,わずか 50.4%であり,180 日の時点で MOUD を受け取っていたのは 57.5%であった.刑務所内で MOUD を受け取ることは,受け取らない場合と比較して,釈放後の致死的過量服用のリスクが低く(補正後のハザード比 0.48,95% CI 0.36~0.64),非致死的過量服用のリスクが低く(補正後のハザード比 0.76,95% CI 0.68~0.85),全死因死亡のリスクが低く(補正後のハザード比 0.44,95% CI 0.35~0.56),再入所のリスクが低いこと(補正後のハザード比 0.88,95% CI 0.81~0.94)と関連した.入院率に 2 群間で大きな差はなかった.

結 論

刑務所で MOUD を受け取ることは,釈放後に MOUD 治療を開始する可能性が高くなること,および過量服用・全死因死亡・再入所のリスクが低くなることと関連した.(米国国立衛生研究所ほかから研究助成を受けた.)

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2025; 393 : 994 - 1003. )