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    NEJM.orgからピックアップされている注目記事の一覧です.

May 31, 2001
Vol. 344 No. 22

  • カルベジロールと慢性心不全の生存
    Carvedilol and Survival in Chronic Heart Failure

    カルベジロールと慢性心不全の生存

    β 遮断薬は,軽度から中等度の心不全の治療に用いられているが,重度の心不全患者では,病態悪化の可能性に対する懸念から,使用を控えるのが通常である.この無作為割付け臨床試験では,重度心不全患者を対象に,α1,β1,β2 受容体を遮断するカルベジロールの効果を検討した.プラセボと比べ,カルベジロールでは死亡リスクが 35%低下し,死亡と入院を合せたリスクが 24%低下した.
    この研究の結果は,重度心不全患者に対するカルベジロールの使用を支持するものである.しかし,この研究では,著明な体液貯留,臨床的に顕著な腎機能不全,低血圧の患者や,血管拡張薬や陽性変力作用薬が必要な患者が除外されている.そのため,今回の有望な結果が,こうした臨床特性がある患者にも当てはまるか否かは明らかでない.

    • 進行慢性心不全におけるブシンドロール
      Bucindolol in Advanced Chronic Heart Failure

      軽度から中等度の慢性心不全の治療における,β 遮断薬の役割は確立している.この研究では,より進行した心不全の患者 2,708 例を対象に,非選択的 β 遮断薬であるブシンドロールの効果を検討した.全死因死亡に対する治療効果は,非黒人患者を除いて認められなかった.循環器疾患による死亡や,死亡と心移植を合せたエンドポイントで,小さなリスク低下を認めたのみであった.
      この臨床試験は,いくつかの先行研究と異なり,非黒人患者のサブグループをおそらく除いて,進行慢性心不全患者に対する β 遮断薬(この場合ブシンドロール)の使用を支持しない.ブシンドロールに関する今回の結果は,他の β 遮断薬には当てはまらない可能性もある.

      • HLA-B*35 サブタイプと AIDS への進行
        HLA-B*35 Subtypes and Progression to AIDS

        HLA-B*35 サブタイプと AIDS への進行

        主要組織適合性抗原クラス I の HLA-B*35 および Cw*04 対立遺伝子は,ヒト免疫不全ウィルス 1 型(HIV-1)感染患者における,AIDS への進行速度の上昇と関連している.この研究では,患者 850 例のコホート集団を対象に,HLA-B*35 のサブタイプと,疾患の進行との関連を調査した.もっとも頻度の高いサブタイプである HLA-B*3501 では,進行速度の上昇を認めなかった.しかし,同類の遺伝子である HLA-B*3501-Px サブタイプでは,AIDS に進行する速度が顕著に上昇した.
        今回の分析は,HLA 分子における単一のアミノ酸の変異が,HIV-1 感染から AIDS への進行速度に大きな影響を及ぼしていることを示している.これらの HLA-B 対立遺伝子が,HIV-1 に対する免疫応答に対して臨床的に大きな作用をもつことを,今回の知見は示している.

        • 喉頭移植と 40 ヵ月の追跡調査
          Laryngeal Transplantation and 40-Month Follow-up

          喉頭移植と 40 ヵ月の追跡調査

          この報告は,何年も前に喉頭と咽頭を損傷し,発声できなくなった男性に対する,喉頭と咽頭の死体移植の結果を記述している.患者は,移植直後から会話が可能になり,36 ヵ月の時点で,患者固有の抑揚と音質を伴う正常の音声となり,嚥下も正常に行うことが可能になった.術後合併症として,拒絶反応が 1 回,気管・気管支炎が 3 回,カリニ肺炎が 1 回生じた.
          成功裡に移植できる臓器のリストは増加し続けている.しかしながら,生存に不可欠ではない喉頭のような臓器移植の利点は,手術合併症による短期リスクや,免疫抑制や拒絶反応による長期リスクを考慮して,慎重に評価しなければならない.

          • 最近の概念:癌性消化管閉塞に対する拡張可能な金属ステント
            Current Concepts: Expandable Metal Stents for Gastrointestinal Obstruction Due to Cancer

            最近の概念:癌性消化管閉塞に対する拡張可能な金属ステント

            消化管癌の合併症として,閉塞は頻度が高く重篤である.この論文では,拡張可能な金属ステントの利用について概説している.金属ステントは,食道,胆道系,腸管の閉塞性腫瘍の治療法における最近の進歩であり,外科手術の代替療法である.将来の方向性として,良性疾患に対して体内で分解されうる材料を用いたステントや,癌に対して放射線や化学療法薬を放出する金属ステントなどが考えられる.

            • 医学の進歩:筋萎縮性側索硬化症
              Medical Progress: Amyotrophic Lateral Sclerosis

              医学の進歩:筋萎縮性側索硬化症

              「運動ニューロン疾患」,あるいは通称「ルー・ゲーリック病」とも呼ばれる筋萎縮性側索硬化症(ALS)は,成人で発症し,四肢の運動ニューロンの変性が生じ,進行性であり,平均生存期間はわずか 3~5 年である.この論文では,スーパーオキシドジスムターゼ 1(SOD1)をコードする遺伝子の変異により生じた ALS の家族性発症の研究から得られた洞察を含めて,ALS に関する最近の情報が示されている.