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This Week at NEJM.org
NEJM.orgからピックアップされている注目記事の一覧です.
February 15, 2001
Vol. 344 No. 7
ORIGINAL ARTICLES
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アプガースコアの価値の持続
Continuing Value of the Apgar Scoreアプガースコアの計測は,新生児の状態と予後を予測する,簡便な手段である.この後ろ向きコホート研究では,新生児 145,627 例を対象に,1 分および 5 分アプガースコアと,臍動脈血 pH 値を測定した.早期産と満期産双方の新生児で,アプガースコアが高くなるほど,生存率も上昇した.早期産と満期産双方の新生児で,新生児死亡の相対危険度は,5 分アプガースコアが 0~3 点の場合に,もっとも高かった.5 分アプガースコアは,新生児生存率の予測因子として,臍動脈血 pH 値よりも優れていた.
この大規模研究は,アプガースコアが,新生児の状態の指標として依然価値があり,したがって,より集中的なケアを必要とする新生児を同定する上でも価値があることを示している.アプガースコアが,臍動脈血 pH という「ハイテク」な検査値よりも優れているという知見には鼓舞される. -
抗レトロウイルス療法の中止の結果
Consequences of Discontinuing Antiretroviral TherapyHIV 感染患者では,抗レトロウイルス薬の併用療法によって,完全なウイルスの抑制が達成されないことが多い.16 例の患者を対象とした無作為化試験で,治療の中止によって,CD4 細胞数が減少し,血漿 HIV RNA 量が増加した.こうした変化は,複製能のより高い野生型ウイルスの出現に伴うものであったが,同時にまた,抗レトロウイルス薬に対する感受性の向上とも関連していた.
ウイルス血症が持続する患者に対する,抗レトロウイルス薬治療の中止には,利益と欠点双方の可能性がある.すなわち,治療の中止によって,薬剤感受性が向上する可能性がある反面,血漿 HIV RNA 量やウイルスの複製能が上昇し,CD4 細胞数が減少する可能性もあるからである.こうした短所からは,この患者グループにおける抗レトロウイルス薬治療を継続すべきことが示唆される. -
免疫抑制患者における非侵襲的換気法
Noninvasive Ventilation in Immunosuppressed Patientsこの無作為試験では,発熱,肺炎,初期の急性呼吸不全の患者 52 例に対して,間欠的な非侵襲的換気法か,標準的な非換気療法の,いずれかを行った.大部分の患者は,造血系悪性腫瘍と好中球減少症の結果として,免疫抑制状態にあった.非侵襲的換気法によって,気管内挿管の実施率や入院時死亡率が,有意に低下するという結果だった.
この研究は,盲検の不可能な小規模の臨床試験ではあったが,非侵襲的換気法によって,免疫抑制を伴うハイリスク患者の予後を改善しうるという根拠を示している. -
腋窩多汗症に対するボツリヌス毒素 A
Botulinum Toxin A for Axillary Hyperhidrosis原発性多汗症の定義は,明らかな原因を伴わない,制御不能な過剰発汗である.治療は不満足なことが多い.患者 145 例を対象とするこの無作為割付け,二重盲検,プラセボ対照臨床試験では,重症の腋窩多汗症に対するボツリヌス毒素 A の注入を評価した.ボツリヌス毒素 A の注入によって,汗産生の平均速度が有意に低下し,効果のかなりの部分が,6 ヵ月間持続した.
ボツリヌス毒素 A は,汗腺の交感神経伝達に介在するアセチルコリンの放出を遮断することで,過剰発汗を阻止すことが可能である.ボツリヌス毒素 A は,顔面ジストニー,アカラジア,慢性裂肛などの,他の疾患の治療に広く用いられてきた.今回の研究は,重症の腋窩多汗症に対しても,ボツリヌス毒素 A が安全で効果的な治療法であることを示唆している.
REVIEW ARTICLES
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最近の概念:肝生検
Current Concepts: Liver Biopsyこの総説で解説されているように,肝組織の採取方法には,経皮生検,経頸静脈生検,腹腔鏡生検,吸引針生検がある.肝生検は,診断の確定に加えて,病期,予後,疾病管理に関する有用な情報を提供しうるが,絶対的および相対的な禁忌がいくつか存在する.
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疾患のメカニズム:甲状腺ホルモンと心血管系
Mechanisms of Disease: Thyroid Hormone and the Cardiovascular System甲状腺ホルモンには,心血管系の機能に対する,重要な細胞的および生理的作用がある.この総説では,これらの作用,甲状腺機能亢進症と甲状腺機能低下症の患者に生ずる心血管系機能の変化,および心疾患患者に生ずる甲状腺機能の変化について概説している.