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    NEJM.orgからピックアップされている注目記事の一覧です.

August 23, 2001
Vol. 345 No. 8

  • 大腸癌スクリーニング
    Screening for Colorectal Cancer

    大腸癌スクリーニング

    50~75 歳で,大腸癌の症状がない 2,800 例を超える成人が,便潜血検査と結腸鏡検査を行うスクリーニング・プログラムに参加した.便潜血検査陽性の参加者の約 30%に,結腸の新生物が存在した.便潜血検査と S 状結腸検査の併用によるスクリーニングの精度は,S 状結腸内視鏡単独より顕著に高いわけではなかった.

    大腸癌スクリーニングにより救命が可能だが,最良のスクリーニング方法に関する一般的な合意はない.便潜血検査と S 状結腸内視鏡による一回の検診では,結腸に新生物が存在する患者の約 25%を同定できない.適切な医療資源が存在する場合,一回のスクリーニング検査としては,全長にわたる結腸鏡検査のほうが優れている.

    • 銅製 IUD と卵管不妊症
      Use of the Copper IUD and Tubal Infertility

      銅製 IUD と卵管不妊症

      銅を含有する子宮内避妊器具(IUD)により,卵管不妊症のリスクが上昇する可能性があるという懸念が,産児制限の方法として非常に効果的な本法の利用を制限してきた.症例対照研究の方法を用いて,卵管閉塞性不妊症(子宮卵管造影法で確認)の未妊婦,卵管閉塞を伴わない不妊症女性,および初妊婦で,避妊法の使用歴や他の特性を比較した.IUD 使用に関連する卵管閉塞のオッズ比は,不妊女性を対照にした場合は 1.0 であり,初妊婦を対照にした場合は 0.9 であった.

      この大規模な症例対照研究では,銅を含有する IUD の使用歴は,未妊婦における卵管閉塞のリスクの上昇とは関連していなかった.今回の結果は,骨盤の炎症性疾患のリスクが高くない未産婦において,効果的な産児制限法であるこの方法を,より多く利用することを支持するものである.

      • 急性呼吸不全に対する腹臥位
        Prone Positioning for Acute Respiratory Failure

        急性呼吸不全に対する腹臥位

        急性呼吸不全を伴う重症患者を,酸素供給を改善するために,腹臥位(うつ伏せ)の体位にする場合がある.患者 304 例を対象とする本研究では,相当の看護努力が必要になるこの方法で,患者を仰臥位で扱う従来の方法より,生存率が改善するか否かを評価した.研究者らは,腹臥位法による酸素供給の改善は確認したものの,10 日目,集中治療室からの退室時,6 ヵ月目の時点で評価した生存率には効果がないことを見出した.

        今回の知見は,急性呼吸不全の患者を腹臥位にすることが正当化できないことを示唆している.腹臥位法により,酸素供給は改善したが,死亡は予防しなかった.重度の低酸素血症の患者には,この方法が有効な可能性もある.しかし今回の臨床試験は,この可能性を評価するに足る統計的検出力がなかった.

        • 心不全患者における頸静脈圧の上昇および III 音の予後的重要性
          Prognostic Importance of Elevated Jugular Venous Pressure or a Third Heart Sound in Patients with Heart Failure

          心不全患者における頸静脈圧の上昇および III 音の予後的重要性

          心不全患者における一般的な理学所見に,独立した予後因子としての価値があるか否かは明らかでない.多数の心不全患者集団を対象とするこの後ろ向き研究では,頸静脈圧上昇と III 音のいずれも,ポンプの機能不全による死亡を含む有害事象と独立に関連していることが,多変量解析で示された.

          診断技術の進歩に伴い,理学的検査の重要性は近年軽視されている.この研究は,心不全患者における一般的な理学所見が有用な予後因子であることを示しており,ベッドサイドにおける臨床評価の重要性を再確認して いる.

          • 経口ワクチンからの遺伝子組換え種痘–狂犬病ウイルスによるヒトの感染症
            Human Infection with Recombinant Vaccinia–Rabies Virus from an Oral Vaccine

            経口ワクチンからの遺伝子組換え種痘–狂犬病ウイルスによるヒトの感染症

            飼犬に噛まれ軽度の擦過傷と刺傷を受けたあとに,28 歳の妊娠女性が腕の蜂窩織炎で入院した.壊死性病変が生じ,筋膜切開が必要になった.患者にはその後,落屑を伴う全身性の紅皮症が生じた.女性が飼犬に噛まれたのは,野生肉食動物のための経口狂犬病ワクチンを含んだ餌を,犬の口から取り出したときであった.この弱毒化生ワクチンには,遺伝子組換え種痘–狂犬病糖蛋白ウイルスが含まれている.女性は完全に回復した.

            この症例報告は,生きた遺伝子組換え狂犬病ウイルスに,ヒトが感染したことを示している.このウイルスは,経口ワクチンとして利用され,野生のアライグマやキツネにおける狂犬病の発生率を減少させる目的で広範に出回っている.患者の抗体反応と,創傷部から採取した検体検査の双方で,種痘–狂犬病ウイルスによる感染が確認されている.

            • 疾患のメカニズム:血管拡張性ショックの病因論
              Mechanisms of Disease: The Pathogenesis of Vasodilatory Shock

              疾患のメカニズム:血管拡張性ショックの病因論

              血管拡張性ショックは,血管平滑筋の収縮不全により生じ,敗血症が原因であることがもっとも多い.この総説では,カリウムチャンネルの活性化,酸化窒素合成の上昇,バソプレシン欠乏など,病態の基礎にあるメカニズムが解説されている.