寄稿
The New England Journal of Medicine・NEJM Catalyst・NEJM Evidenceで、医学・医療のあらゆるプロセスを学ぼう
最高の医学エビデンスを扱うNEJM、創出されたエビデンスの提供方法を論じるNEJM Catalyst、臨床研究のプロセスを学ぶために最適なNEJM Evidence
The New England Journal of Medicine (NEJM)は200年以上の歴史を有する臨床医学雑誌であり、医療に関する最高かつ最新のエビデンスを継続して発表している。NEJMグループはこの3年間で、2つの姉妹誌の創刊という新たな取り組みにチャレンジしている。2020年に医療提供にかかわるエビデンスを報告する姉妹誌としてNEJM Catalyst Innovations in Care Delivery (NEJM Catalyst)を創刊し、2022年にはNEJM Evidenceを発刊した。医学的エビデンスが構築され患者がそのエビデンスを享受するまでの流れのなかで、3誌は明確に異なる領域をターゲットにしており、掲載される医学論文の棲み分けがある(図)。最高の医学エビデンスを報告し続けるNEJM、臨床研究のプロセスを学ぶために最適な医学雑誌NEJM Evidence、そして創出されたエビデンスの提供の方法を論じるNEJM Catalyst、3誌を読むことで、医学・医療のあらゆるプロセスを学ぶことができるようになった。NEJMは主に臨床医学者や臨床医学に関わるトランスレーショナル研究に携わる基礎医学者に、NEJM Evidenceはこれから臨床研究を始めようと思っている臨床家に、そしてNEJM Catalystは病院で管理的な立場にいる医療従事者にとって最適な道標になるであろう。
NEJM Evidenceを読むことで、臨床研究が行われた背景を知り、奥行きを味わおう
NEJMは最高レベルの質の高い論文を扱う、臨床医であれば言わずと知れた臨床医学雑誌である。NEJMが臨床医から信頼されつづけてきた理由は、論文の新規性だけでなく、堅牢な臨床研究の手法を実践した研究論文を扱っているからであり、厳格なpeer reviewシステムで吟味された選りすぐりの論文を掲載しているからといえる。一方、NEJMは臨床現場で実践されていく研究結果そのものに主眼を置いているため、臨床研究がなぜ行われ、データがどのように解析され、そしてどのように研究結果を解釈するべきかという臨床研究の背景や本質を理解することが難しいというのがNEJMの一読者として感じていたところではあった。NEJM Evidenceは、このようなNEJMで補いきれない部分に視点を当てた、論文の奥行きを知ることができる医学雑誌といえる。
NEJM Evidenceは臨床研究のプロセスを学ぶことにおいて最適な医学雑誌である
NEJM Evidenceは、他の2誌にはないユニークなコンテンツを扱っている。例えば、臨床研究の複雑な方法や結果の評価の仕方について紐解き、解説を加えた論文を掲載している。また、臨床研究を実施するうえで必須の統計解析などを、アニメーションを用いて分かり易く説明するなど教育コンテンツも充実している。本誌を読むことでエビデンスの構築に必要な考え方や手法を学ぶことができる。学術誌が与える影響を裏付ける一つの指標としてインパクトファクターがあり、NEJMは臨床医学雑誌の中で最高の値が付けられているが、NEJM Evidenceにおいても、近い将来に高いインパクトファクターが付くことは間違いないであろう。