January 29, 1998 Vol. 338 No. 5
多発性硬化症の病変における軸索離断
AXONAL TRANSECTION IN THE LESIONS OF MULTIPLE SCLEROSIS
B.D. TRAPP AND OTHERS
多発性硬化症は中枢神経系の炎症性脱髄疾患で,若年成人における神経学的障害のもっとも一般的な原因である.抗炎症剤または免疫抑制剤療法にもかかわらず,ほとんどの患者が,軸索喪失を反映する可能性がある進行性神経変化を示す.われわれは,脳組織の病理検査を行って多発性硬化症患者における軸索の変化を調べた.
多発性硬化症患者 11 人および脳疾患を有しない被験者 4 人の剖検から脳組織を得た.活動型多発性硬化症病変 14 例,慢性活動型病変 33 例,そして正常にみえる白質のサンプルについて脱髄,炎症,および軸索の病理学的変化の有無を,免疫組織化学および共焦点顕微鏡によって調べた.卵形の神経終末軸索の存在によって確認した軸索離断は,病変 47 例すべてに認められ,病変 18 例ではこれを定量した.
離断軸索は多発性硬化症病変の一貫した特徴であり,その発生率は病変内部の炎症の程度と相関した.組織 1 mm3 当りの離断軸索数は,活動型病変で平均 11,236,慢性活動型病変の細胞密度の低い周縁部で 3,138,慢性活動型病変の細胞密度の低い中心部で 875,そして対照脳からの正常にみえる白質では 1 より少なかった.
多発性硬化症病変では,軸索離断は一般的で,この疾患における非可逆的神経障害と病理学的に相関する可能性がある.