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August 11, 2005 Vol. 353 No. 6

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中耳腔換気用チューブの早期挿入と待機挿入の発達上の転帰の比較
Developmental Outcomes after Early or Delayed Insertion of Tympanostomy Tubes

J.L. Paradise and Others

背景

持続性滲出性中耳炎の幼児において,中耳腔換気用チューブ挿入を伴う鼓膜切開術は,その後発達上の障害が残らないようにするためにしばしば実施されてきた.われわれはこれまでに,滲出液が持続的にみられる 3 歳未満の小児において中耳腔換気用チューブの早期挿入と待機挿入を比較し,早期挿入は,3 歳時あるいは 4 歳時の発達上の転帰の改善につながらないことを報告した.しかし,学童期小児の発達上の転帰に対する影響については不明である.

方 法

生後 62 日未満の健常乳児 6,350 例を登録し,定期的に中耳の滲出液について評価した.3 歳未満で,中耳の滲出液が持続的にみられた小児 429 例を,中耳腔換気用チューブを早期に挿入する群,あるいは最長で 9 ヵ月後まで待機し,滲出液が持続していればチューブを挿入する群に無作為に割付けた.これらの小児のうち 395 例について,6 歳の時点で発達上の転帰を評価した.

結 果

6 歳の時点で,早期治療群の小児の 85%と待機治療群の 41%が中耳腔換気用チューブ挿入を受けていた.早期治療群と待機治療群のあいだには,ウェクスラー式知能検査(Wechsler Full-Scale Intelligence Quotient,98±13 対 98±14),語彙の多様性を測定するための語彙力テスト(Number of Different Words test,183±36 対 175±36),構音能力を測定するための子音正確性検査改訂版(Percentage of Consonants Correct--Revised test,96±2 対 96±3),中枢性聴覚処理の指標である SCAN 検査(SCAN test,95±15 対 96±14),および行動や情動に関するいくつかの測定法を含む,30 種類の評価法のいずれにおいても,平均(± SD)スコアに有意な差は認められなかった.

結 論

早期の中耳腔換気用チューブ挿入は,われわれが検討した期間中に中耳の滲出液が持続的にみられ,それ以外は健常な 3 歳未満の小児において,6 歳の時点での発達上の転帰を改善しない.

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2005; 353 : 576 - 86. )