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May 15, 1997 Vol. 336 No. 20

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アシュケナジユダヤ人における BRCA1 および BRCA2 の特異的変異による癌のリスク
THE RISK OF CANCER ASSOCIATED WITH SPECIFIC MUTATIONS OF BRCA1 AND BRCA2 AMONG ASHKENAZI JEWS

J.P. STRUEWING AND OTHERS

背景

癌のリスクが高い家系で BRCA1 および BRCA2 のジャームライン変異のキャリアは,乳癌のリスクが 85%と推定されている.BRCA1BRCA2 変異を合せた発生率は,アシュケナジユダヤ人では 2%を越えているため,われわれは,ワシントン D.C. 地区に住むユダヤ人男女の大規模集団において癌のリスクを推定することができた.

方 法

疫学的質問事項に記入したユダヤ人の 5,318 人の被験者から血液サンプルを採取した.BRCA1 における 185delAG と 5382insC 変異ならびに BRCA2 における 6174delT 変異のキャリアを,ポリメラーゼ連鎖反応に基づく測定法によって特定した.変異キャリアと非キャリアの親族の癌の既往歴を比較することにより,乳癌およびその他の癌のリスクを推定した.

結 果

BRCA1 または BRCA2 変異のキャリア 120 人を特定した.70 歳までにキャリアに乳癌が発症する推定リスクは,56%(95%信頼区間,40~73%);卵巣癌では 16%(95%信頼区間,6~28%);そして前立腺癌では 16%(95%信頼区間,4~30%)であった.BRCA1 変異のキャリアと BRCA2 変異のキャリアでは,乳癌のリスクに有意差はなく,キャリアの親族においても結腸癌発生率は上昇しなかった.

結 論

アシュケナジユダヤ人の 2%以上が,BRCA1 または BRCA2 変異を有し,これは乳癌,卵巣癌,そして前立腺癌のリスクを増加させる.今回の乳癌のリスクは過大評価されている可能性があるが,それでもなお高リスク家系の被験者に基づくこれまでの推定値よりはるかに低い.

英文アブストラクト ( N Engl J Med 1997; 336 : 1401 - 8. )