米国およびカナダにおける心筋梗塞の高齢患者の心臓手術の実施と転帰
Use of Cardiac Procedures and Outcomes in Elderly Patients with Myocardial Infarction in the United States and Canada
J.V. TU AND OTHERS
急性心筋梗塞は,米国およびカナダにおける障害と死亡の主要な原因である.われわれは,人口ベースの研究を行い,2 国の高齢者における急性心筋梗塞に対する心臓手術の施行とその後の転帰を比較した.
1991 年に新たに急性心筋梗塞を起した米国のメディケア受益高齢者 224,258 人と,カナダ,オンタリオ州の高齢患者 9,444 人における侵襲的心臓検査・手術の施行と死亡率を比較した.
米国の患者は,カナダの患者と比較して,指標となる心筋梗塞後最初の 30 日間に,冠動脈造影術を受ける割合が有意に高く(34.9% 対 6.7%,p<0.001),経皮経管的冠血管形成術(11.7% 対 1.5%,p<0.001),冠動脈バイパス術(10.6% 対 1.4%,p<0.001)についても同様であった.追跡期間 180 日間を通じてみるとこれらの心臓検査・手術の施行の差は縮まるが,なお存続した.30 日死亡率は,米国の患者ではカナダの患者よりわずかではあるが有意に低かった(21.4% 対 22.3%,p = 0.03).しかし,1 年死亡率は実質的に同一であった(米国で 34.3% 対 オンタリオで 34.4%,p = 0.94).
急性心筋梗塞後の短期死亡率は,米国ではオンタリオよりわずかに低かったが,1 年の追跡期間を通してみるとこれらの差は存続しなかった.米国では,カナダと比べて心臓検査・手術の施行率が著しく高いにもかかわらず,米国の急性心筋梗塞の高齢者ではより良好な長期生存率は得られていないようである.