February 20, 1997 Vol. 336 No. 8
心不全患者の死亡率および罹患率に及ぼすジゴキシンの効果
THE EFFECT OF DIGOXIN ON MORTALITY AND MORBIDITY IN PATIENTS WITH HEART FAILURE
THE DIGITALIS IEVESTIGATION GROUP
慢性心不全で正常洞調律患者の治療における強心配糖体の役割については,いまなお論争がある.われわれは,無作為化二重盲検臨床試験において,ジゴキシンが死亡と入院に及ぼす効果を検討した.
主試験では,左室駆出率 0.45 以下の患者を無作為割付けして,利尿薬とアンジオテンシン転換酵素阻害薬に加えて,ジゴキシン(3,397 人)またはプラセボ(3,403 人)を投与した(ジゴキシン投与量の中央値,0.25 mg/日;平均追跡期間,37 ヵ月).駆出率が 0.45 より大きい患者を対象とした補助試験では,492 人をジゴキシンに,496 人をプラセボに無作為割付けした.
主試験では,死亡への影響は認められなかった.死亡数はジゴキシン群 1,181 例(34.8%),プラセボ群 1,194 例(35.1%)であった(ジゴキシンをプラセボと比較したときのリスク比,0.99;95%信頼区間,0.91~1.07;p=0.80).ジゴキシン群では,心不全の悪化に起因する死亡のリスクに減少傾向が認められた(リスク比,0.88;95%信頼区間,0.77~1.01;p=0.06).ジゴキシン群では,プラセボ群よりも全入院率が 6%低く,心不全の悪化により入院した患者は少なかった(26.8% 対 34.7%;リスク比,0.72;95%信頼区間,0.66~0.79;p<0.001).補助試験では,心不全の悪化による死亡または入院の複合を主要転帰としたが,その知見は主試験の結果と一致した.
ジゴキシンは全死亡率を減少させなかったが,全入院率と心不全の悪化による入院率を低下させた.これらの知見は,慢性心不全の管理におけるジゴキシンの役割をより明確にしている.