The NEW ENGLAND JOURNAL of MEDICINE

日本国内版

年間購読お申込み

日本語アブストラクト

February 20, 1997 Vol. 336 No. 8

Share

Share on Facebook
Facebookで共有する
Share on Twitter
Twitterでつぶやく
Share on Note
noteに投稿する

RSS

RSS

中等度低体温療法による外傷性脳損傷の治療
TREATMENT OF TRAUMATIC BRAIN INJURY WITH MODERATE HYPOTHERMIA

D.W. MARION AND OTHERS

背景

外傷性脳損傷は,その損傷を悪化させうる,さまざまな代謝過程を惹起する.低体温療法には,これらの有害な代謝反応のいくつかを抑制する可能性を示すエビデンスがある.

方 法

無作為化対照試験で,重度の閉鎖性頭部外傷(グラスゴー昏睡尺度 [GCS] でスコア 3~7)を負った 82 例において,中等度低体温療法の効果と正常体温の効果を比較した.低体温療法に割付けされた患者は,損傷後平均 10 時間,33℃に冷却し,24 時間,32~33℃に維持して,その後加温した.治療割付けを知らない物理療法とリハビリテーションの専門医が,GCS を用いて 3 ヵ月後,6 ヵ月後,12 ヵ月後に患者を評価した.

結 果

人口統計学的特徴と損傷の原因および重症度は,低体温療法群と正常体温群で同様であった.12 ヵ月の時点で,低体温療法群の患者の 62%と正常体温群の患者の 38%が,転帰良好(中等度,軽度,または後遺障害なし)であった.低体温療法群の転帰不良に関する補正リスク比は,0.5(95%信頼区間,0.2~1.2)であった.入院時の昏睡スコアが 3 または 4 の患者の転帰は,低体温療法によって改善しなかった.スコア 5~7 の患者では,低体温療法は,3 ヵ月と 6 ヵ月の時点での転帰の有意な改善と関連したが(両時点とも,転帰不良の補正リスク比,0.2;95%信頼区間,0.1~0.9),12 ヵ月の時点では有意な改善を認めなかった(リスク比,0.3;95%信頼区間,0.1~1.0).

結 論

重度の外傷性脳損傷を負い,入院時の昏睡スコアが 5~7 の患者に対し,中等度低体温療法による 24 時間の治療を行えば,神経学的回復が早まり,転帰が改善すると思われる.

英文アブストラクト ( N Engl J Med 1997; 336 : 540 - 6. )